「さわり」だけでも聞かせて…で歌うのはどの部分? 間違いと思っていた認識も実は間違いじゃない!? | ラジトピ ラジオ関西トピックス

「さわり」だけでも聞かせて…で歌うのはどの部分? 間違いと思っていた認識も実は間違いじゃない!?

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「さわり」という言葉。放送の世界だけでなく、広く一般で使われるようになっています。しかし、以前私は勘違いをしていました。曲の出だしが聞きたくて、「ちょっとこの曲のさわり聞かせて」というようなことを言って、失敗した経験が。

 そうなんです。「さわり」の本来の意味は、“出だし”や“最初の部分”ではないのです。では、どこを指すのでしょう。

『広辞苑 第7版』(岩波書店)を引くと、「さわり【触り】」の2番目の意味として、「《ア》(他の節(ふし)にさわっている意)義太夫節の中に他の音曲の旋律を取り入れた箇所。曲中で目立つ箇所になる。《イ》転じて、邦楽の各曲中の最大の聞かせ所。(一部略)《ウ》さらに転じて、一般的に話や物語などの要点、または最も興味を引く部分」などとあります。

「義太夫節(ぎだゆうぶし)」とは、浄瑠璃(三味線などを伴奏とした語り物)の一種、または代名詞で、現代風に言うと劇場音楽のこと。そのうち、いわゆるナレーションやセリフにあたる「語り」を太夫(たゆう)が担います。文楽に代表される人形浄瑠璃、あるいは歌舞伎で、三味線奏者の隣で声を振り絞っている人を見たことはありませんか? あの人が太夫。語りと演奏が対になって作りだされるのが、音楽としての義太夫節です。

 こうしたことからもわかるように、「さわり」とは最初ではなく、一番の聞かせどころということになります。

 ところが、『新明解国語辞典 第8版』(三省堂)には、このような意味もあると書かれています。

「また、近年は歌の冒頭の部分を指して言う向きもある。」(一部抜粋)

 現代の言葉を多数収録している新明解。ということは、私が勘違いしたと書いた、「さわり」を「出だし」とする認識も、現代では、必ずしも“間違い”とは言い切れないという風に変わってきていると捉えられます。

 このほかに、「さわり」と同じ意味を示す言葉として「さび(サビ)」があります。前出の広辞苑には「さび」について「歌謡曲で、他より強調された聞かせどころの部分」とも載っていました。


◆「ことばコトバ」アーカイブ記事

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