また、『都道府県別全国方言辞典』(三省堂)の「京都府」の欄に、「はんなり……明るくて上品な」などと記載されています。
このように「はんなり」には「華やか」「明るい」などの意味が込められ、京都とその周辺で、かなり古くから使われていたのは間違いないようです。
誰が最初に異なる意味で使い始めたのかはわかりません。ただ、意図的に使ったというより、元はこうした意味で使われていた言葉がメディアを通じて全国区になり、使う人が増えるうちに本来の意味から変わっていった、また、多くの人が京都に対して抱くであろう「やわらかい」「ゆったり」「優雅」などのイメージが言葉の響きと重なり、結果として多様な意味合いを持つに至った……などとも考えられます。
もともと京都とその周辺で使われていた言葉が全国に拡がり、地元とは異なる意味で一般化されている例は他にも存在します。どのような形にせよ、各地の方言が残り、生き続けることはすばらしいのですが、個人的にはやはり「本来の意味」で拡がってほしいです。なぜなら、言葉そのものはもちろん、その土地の「文化」も大事だからです。文化があるからこその本来の意味であり、その背景や成り立ちも「文化」からつながって見えてきます。できる限り、その土地の「言葉と文化」を守り伝えていきたい、そしてそのお手伝いが少しでもできれば……と思っています。
言葉は時代とともに、その意味も使い方も変化します。「ことばコトバ」では、こうした言葉の楽しさを紹介していきます。
(「ことばコトバ」第40回 ラジオ関西アナウンサー・林 真一郎)