「立春」の2月5日頃は、日本では最も寒い時期で、とても春の始まりとは言えません。よく「暦の上では春ですけれども、まだまだ厳しい寒さが続きます」と言いますね。日本では、「暑さ寒さも彼岸まで」という言葉があるように、3月20日過ぎのお彼岸から「はる」が始まり、9月20日過ぎのお彼岸から「あき」が始まるのだと、昔の人は言っているのです。
中国では立春などが季節の始まりだと考え、日本では春分が「はる」の始まりだと体感していた。つまり、中国と日本で、季節の始まりが1か月半ずれているわけです。
中国大陸は土の塊ですから、日が差すとすぐ暑くなり、日が沈むとすぐ冷える。日照時間が最も短い「冬至」を過ぎれば、すぐに暖かくなっていくのです。ところが、海に囲まれた日本では、水温は上がるにも下がるにも時間がかかるので、季節の進みが中国大陸よりも遅れるのです。
ヨーロッパはどうでしょう。例えば英語の辞書を見ると、「Spring(スプリング)」は、「春、春分から夏至まで」と書いてあり、ヨーロッパも季節の捉え方は日本と一緒ですね。緯度は高いけれど、海から西風が吹くヨーロッパの風土は、海に囲まれた日本の風土と似ていたわけです。
日本の「春」の語源は、水がぬるんで、鳥が鳴き始め、地中から草の芽が勢いよく出てくる、はちきれる、生命が「張る」だと言われています。英語の「Spring(スプリング)」には、はちきれるバネ、泉、飛び跳ねる、湧き出る、という意味があり、日本語の「春」と、連想が同じですね。
季節について考えてみるのもおもしろいですね。
・解説=「兵庫・神戸のヒストリアン」 田辺眞人(園田学園女子大学名誉教授)
※ラジオ関西『田辺眞人のまっこと!ラジオ』2022年2月4日放送回、「田辺眞人のラジオレクチャー」より