そんな中、故郷から出てきたベルナルドの妹・マリア(レイチェル・ゼグラー)はダンスパーティでトニーと出会う。二人は一目で恋に落ちてしまった。二人の恋愛を絶対に許さないという兄ベルナルド。一方、ベルナルドの恋人・アニータ(アリアナ・デボーズ)は、複雑な思いを抱えながらもマリアを応援しようとする。そして、二人の禁断の恋は、周りの人々を巻き込みながら、悲劇に向かってその歩みを加速してゆく……。
全編を彩るのが、スティーブン・ソンドハイム作詞、レナード・バーンスタイン作曲の名曲の数々。「マリア」、「トゥナイト」、「アメリカ」、「サムホェア」などなど、心に残るナンバーばかり。なんでも、ミュージカルの初演を観たスピルバーグの両親がアルバムを買い求め、10歳のスピルバーグはそれを何回も何回も聴いたという。
そんな不朽の名曲に、素晴らしいダンス。ジャスティン・ペックの振り付けは、1961年版のジェローム・ロビンスによるバレエ的な要素も生かしつつ、よりダイナミックに、よりパワフルになった。街中を駆け抜け、エネルギッシュに躍動感あふれる群舞は、映画ならではの醍醐味だ。
また、作品内ではスペイン語が飛び交う。ラテン系の俳優たちが演じるプエルトリコからの移民たちはとてもリアル。特に大きな意味を持つのは、1961年版でアニータ役を演じたリタ・モレノが参加していること。プエルトリコ出身で中南米系女優として初のオスカーに輝いた彼女が、今回、役者兼製作総指揮に名を連ね、重要な役を演じている。
トニー・クシュナーの書いた脚本も、時代の空気感を反映して興味深い。人種差別、経済格差、宗教やジェンダーなどの社会問題、さらにはコロナのもたらした分断に悩む今の時代とシンクロするようなストーリー展開になっている。
コロナ禍で公開が延期。作詞のソンドハイムが公開直前に亡くなったこと、サウジアラビアやクウェートなどの中東諸国では、同性愛描写が関係してか上映が中止になったこと、主演のアンセル・エルゴートが性暴力告発を受けている事実について釈明が行われていないことなど、作品の中身だけでなく、周辺の話題も含めて注目度が高い。
今作を語るスピルバーグ監督の言葉がある。
『ウエスト・サイド・ストーリー』大ヒット公開中
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