3月、4月は1年で最も引っ越しが多い時期。ところで皆さんは、不動産屋さんに行った際や内見のときに、物件のネーミングに注目されたことはありますか? アパート、コーポ、メゾン、ハイムなど、物件の名前は多種多様ですが、この名付け方には、何か基準があるのでしょうか? 神戸市内に2つの不動産仲介店舗を構える「スモライフ」代表・吉井涼さんに聞きました。
集合住宅のネーミングは「土地、道などの呼称+建物の呼称」で構成されていることが多いもの。ちなみに、建物の呼称としてよく使用される「アパート」「コーポ」は英語で「集合住宅」、「メゾン」はフランス語で「家」、「ハイム」はドイツ語で「家」という意味なのだそう。また、「マンション」は英語では「豪邸」という意味になり、「共同住宅」という意味合いで使用するのは日本だけのようです。吉井さんによると、この「建物の呼称」の部分の名付け方には、明確な基準はないのだそう。建物の持ち主であるオーナーが、その物件の雰囲気やイメージなどに合わせて自由に選択することが多いということでした。
一方、はっきりとした基準があるのは「土地や道などの呼称」の部分です。ほとんどの不動産会社が加盟する業界団体である「不動産公正取引協議会連合会」では、物件のネーミングに使用できる言葉の基準について、「物件が公園、庭園、旧跡その他の施設から直線距離で300メートル以内に所在している場合は、施設の名称を用いることができる」「物件の面する街道の名前を用いることができる」など、主に4つの基準を設けています。ブランド力のある土地の近くに立地する物件でも、これらの基準を満たさない場合は、勝手に物件名にすることはできないそうです。
吉井さんによると、物件の名前がここまで多様化している理由は、オーナーさんの物件をよりよく、新しく見せたいという気持ちから。また、ネーミングにも流行があるそうで、最近は、英語で「大きな住宅、邸宅」などを意味する「レジデンス」という単語を取り入れた集合住宅が増加しているということでした。街に出た際、集合住宅のネーミングに注目すると、新たな発見があるかもしれません。
(取材・文=村川千晶)