1963年に創業し、昨年まで東京を拠点としていた老舗の靴メーカーが、いま、兵庫県たつの市で新たな挑戦を行っている。
革靴の製造・販売を行う株式会社パイオニア。その二代目で、代表取締役を担う西村博さんは、昨年(2021年)、東京にあったオフィスも、店も、自分の家さえも、すべて売り払い、たつの市に移転することを決断。新天地では築100年越えの古民家をリノベーションし、自社のオリジナルブランド「Pionero(ピオネロ)」の店舗をオープンした。新たなスタートを切った西村さんが、なぜ、たつの市で再出発を果たしたのか、取材した。
28年にわたって靴を作り続けてきた西村さんだが、コロナ禍による不況もあり、「これから先のことを考えていた」。そんなときに昔から仕事で縁のあった、たつの市の革業者に遭遇。相談を重ねていくうちに、まちにも魅力を感じ、「これからは好きなことをしていく」と、移住に踏み切った。
実は、当時の同社の社員も1人、西村さんを慕って、その移住に付いてきて、一緒に新たな店を切り盛りしている。
「今まで西村さんは従業員を路頭に迷わせないよう、好きなことをというよりは、私たちのために仕事に追われていた。だから移住の話を聞いたとき、ぜひ好きなことをして、自由に仕事をしてもらいたいと思った。だから、自分はついてきた」(社員)
工房には作りかけの革靴や、塗装を待つ靴、塗装され乾かしている靴があふれている。現在、「Pionero」では婦人靴を主に取り扱う。使用する革は主に「牛・羊・馬」で珍しい物だと「エイ(魚)」の革も使用する。一つひとつ、すべてが手作りで、同じものはない。色や模様もハンドペイントで行い、色味を調合しながら製作。サイズは21センチからと、少し小さ目のものも取り扱う。
基本的にオーダーメイドはしないというが、販売している革靴で、「どうしてもこのデザインがいい、しかし自分の足には合わない」という場合のみ、そのデザインにあわせて制作するそう。「購入者のなかには足が少し悪い方もいる。そういった人たちにもお気に入りの革靴を履いてもらうための案」だという。
革靴といえば、デザインがかわいく、手ざわりも良いが、手入れは大変という印象があるかもしれない。「確かに革靴の手入れは少し時間を使うもの」という西村さんだが、「革というのはとても長持ちするもの。もったいないからと飾るのではなく、実際に触って、使用し、手入れをする。これが大切だ」と力説する。「革は使っている用途でとても顔の変わる面白い素材。それを大切にしてほしい」と、ハンドメイドでつくる革靴の魅力を強調する。
※ラジオ関西『谷五郎の笑って暮らそう!』、「ぐるっと西播磨」より
◆「Pionero」
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