神戸市立博物館(神戸市中央区)で「大英博物館ミイラ展 古代エジプト6つの物語」が開催されている。役人や、女性、子供などさまざまな年齢や立場のミイラから、古代エジプトの謎を解き明かす特別展だ。
ミイラは、古代エジプト文明の研究でも世界を牽引するイギリス・ロンドンの「大英博物館」から選りすぐりの6体が来日。当時の信仰や死生観がわかるミイラ作りの道具や、生活・文化などが垣間見える約250点の遺物も見どころになっている。
注目は、近年、ミイラ研究にも取り入れられている最新のCTスキャンを用いた画像解析だ。健康診断などにも使われるCTスキャン分析により、ミイラの包帯を解くことなく、内部の構造やミイラの性別、健康状態、埋葬方法などもわかってきた。また、1体につき約7千枚撮影されたCTスキャン画像から、3次元画像や高精度の映像を作成。ミイラと共にそれらを用いて、生前の健康状態やミイラ化の過程などを解き明かしている。
下エジプトの神官「ペンアメンネブネスウトタウイ」の展示では、古代エジプトの食事をテーマにした内容も紹介。ミイラとなった当時の王侯貴族など身分の高い人は、召使が身の回りの世話をするなど、裕福な生活のために運動不足になってしまったもよう。また、肉やビール、ワインを飲んでいたという研究もあり、当時の食生活の関係で、歯の状態が悪くなったことがわかっている。
6体のミイラのうち、唯一の女性である「タケネメト」は、紀元前700年頃に生きたテーベの既婚女性。タケネメトのミイラは、幾層もの布で丁寧に包まれ、数千ものビーズで作られたビーズネットが置かれていた。CTスキャンの結果から、髪は頭頂部で束ねられた「お団子頭」だったことが明らかになった。約3千年前に生きた女性の髪型が最新のCTスキャン技術により解明されたことは驚きだ。
また、日本独自の特別企画として、ローマ支配時代(後1~後2世紀)の地下集団墓地「カタコンベ」の部分模型も展示。監修者である金沢大学の河合望教授を隊長とする日本エジプト合同調査隊が、2019年にサッカラ遺跡で発見したものを実寸大で再現した。
担当学芸員の中山創太さんは「最新のCTスキャン技術により新たにわかったことに注目してほしい。約3千年前当時の暮らしに関する展示では、現代でもなじみのある食事や医療というテーマを紹介しているので、より身近に古代エジプトの暮らしを楽しんでほしい」と話している。
※ラジオ関西『サンデー神戸』2022年3月6日放送回より
◆特別展「大英博物館ミイラ展 古代エジプト6つの物語」
会場:神戸市立博物館(〒650-0034 兵庫県神戸市中央区京町24)
会期:2022年2月5日(土)~5月8日(日)
開館時間:9時30分~ 17時30分(入館は17時まで) ※金・土曜日は19時30分まで開館
(入館は19時まで)
休館日:月曜・3月22日(火) *ただし3月21日(月)5月2日(月)は開館
※予約優先制
【神戸市立博物館 公式サイト】
【『サンデー神戸』番組HP】