芸人も被害…「自転車のタイヤの空気を抜くイタズラ」は犯罪? 弁護士が解説「窃盗罪が成立しそうですが…」 | ラジトピ ラジオ関西トピックス

芸人も被害…「自転車のタイヤの空気を抜くイタズラ」は犯罪? 弁護士が解説「窃盗罪が成立しそうですが…」

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 窃盗罪が成立するためには、「不法領得の意思」が必要だと言われております。不法領得の意思とは、判例により、(1)「権利者を排除して他人の物を自己の所有物として」、(2)「その経済的用法に従い利用、処分する意思」、と考えられています。簡単に言いますと、(1)「盗んだ物を自分の物にして」、(2)「その物を利用する意思」がある場合に、窃盗罪が成立します。

 例えば、遅刻しそうになったときに、「後で元の場所に戻そう」と思いながら、他人の自転車を一時的に使ってしまったとします(使用窃盗といいます)。本人としては、一時的に借りるだけであり、(1)の盗んだ物を自分の物にする意思がないとして、理屈上、窃盗罪は成立しません。

 本題に戻りましょう。イタズラ目的で自転車のゴムキャップとバルブを取った場合、自転車のゴムキャップとバルブを使用する意思はありません。したがって、理屈上は不法領得の意思がないため、窃盗罪は成立しないことになります。(ただし、実務上、不法領得の意思がないとして窃盗罪の成立が否定されることは稀だと思いますが……) では、イタズラ目的で自転車のゴムキャップとバルブをとったとして窃盗罪が成立しない場合、他の犯罪は成立しないのでしょうか。

 自転車のゴムキャップとバルブを取ったことにより、自転車のタイヤの空気が抜けて自転車として利用できなくなっているので、器物損壊罪が成立する可能性があります。器物損害罪というと、物を壊した時に成立する犯罪です。他人のお皿を割ったというような場合です。今回の例では、自転車の部品をとっただけで、部品を戻して空気を入れたら再び自転車として走行できるので、「壊した」とはいえないのではないかとも思えます。

 しかし、器物損壊罪は、物を物理的に壊した場合だけでなく、物の効用を損なわせる行為も含まれると考えられています。食器に小便をしたことが器物損壊罪にあたるとした判例があります。食器に小便をしても物理的に壊れるわけでないですし、洗浄して消毒をすれば再び使用することもできるでしょう。とはいえ、小便されたことのある食器を使いたいと思う人はいないでしょうから、実際には食器として使うことができなくなっているので、器物損壊罪が成立すると判断されました。したがって、イタズラ目的で自転車のゴムキャップとバルブを取った場合にも、器物損壊罪が成立する可能性があります。

 もっとも、窃盗罪にしても器物損壊罪にしても、被害額として数百円となりますので、警察に被害を申告したとしても、警察が積極的に捜査をしてくれるかは難しいところだと思います。

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 被害額が小さいことなどから、泣き寝入りになっていまうことも多いこのイタズラ。しかし、イタズラをしている人には、被害に遭って困っている人が芸人さん以外にも多くいるという現状を理解してもらい、一刻も早く意識を改めていただきたいものです。(取材・文=バンク北川 / 放送作家)

◆森本圭典 かなえ法律事務所(神戸市) 共同代表弁護士 / 甲南大学 非常勤講師
2013年12月弁護士登録。地元兵庫県で地域に根ざした弁護士活動を行う。取扱分野は、相続、交通事故、破産、中小企業のトラブルなど。甲南学園を卒業した縁から、甲南大学で非常勤講師も務める。



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