アウトドアブームが叫ばれて久しい。特にコロナ禍の近年は3密を避けて楽しめる点が注目され、一層人気に拍車がかかっている。そうした時代の波に乗るキャンプ用品を制作するメーカーが兵庫県姫路市にある。バケツなどのトタン製品、園芸用品、湯たんぽ、レジャー用品などを幅広く取り扱う「尾上製作所」だ。4代目社長の名城嗣明社長に事業好調の裏側と今後の戦略を聞いた。(取材・文=播磨時報社)
──アウトドア人気が続くが、コロナの影響は?
【名城嗣明社長(以下、名城社長)】業績は少しずつ伸びてきていたが、コロナ直後は緊急事態宣言で小売店が臨時休業することになり、ガタンと落ち込んだ。それでも営業が再開されると、納品してもすぐに売り切れる状態が続くようになった。このときは家庭菜園ブームが起こり、トタン製のジョウロが爆発的に売れた。その後アウトドアがハイシーズンを迎えると、一気にキャンプ用品に火が付いた。ただ、当時は今よりもコロナの重苦しい雰囲気が世間にまん延していたので、売れたのは良いが、なかなか喜べないというのが正直なところだった。
──もともとは生活用品の老舗メーカーだが。
【名城社長】初代が神崎郡福崎町で神社の屋根葺(ぶ)きをしていたのが起源。金属加工の技術を持っていたので、復員後の1948年にトタンで業務用バケツを作り始めた。鉄材を仕入れやすい姫路市内で工場を構え、湯たんぽやジョウロ、モグラ取り器なども作るようになった。キャンプ用品の製造は80年代半ばから。夏場に売れる商品を探していると、世の中に日本製のバーベキュー(BBQ)コンロがないことに気づいた。日本でBBQといえばホルモン。そこで、目の細かな網で焼くコンロを考案した。家族4人で食材合わせ1万円に収まる価格帯で売り出したら大ヒットした。今、売上構成比は日常品とキャンプ用品が半々になり、今後しばらくはキャンプ用品が伸びそう。
──インターネットを活用した製品PRやリサーチにも余念がないそうだが。
【名城社長】毎日、自社をエゴサーチ(インターネット上で検索して自己評価を調べること)している。ユーザーの意見に凹むこともあるが、時には当社のピザ釜と他社製の焚き火台を組み合わせて「こんな使い方ができた」というように逆に教わることも。そういった情報を当社がSNSやYouTubeでさらに拡散すれば、すぐに市場が反応してくれるので面白い。暇さえあればスマホを操作しているから、妻にはいつも叱られてばかりだが……。
──今後の展開は?
◆株式会社尾上製作所
兵庫県姫路市船津町4603-2
電話 079-232-1261
【公式HP】