大森さんはほかの遺族とともにJR西日本歴代社長の刑事裁判を傍聴、自らも法廷で「この事故は、組織的な殺人だ」と、被告らに訴えかけた。
10年近く経った今も、ラジオ関西の取材に「鉄道や電力など、社会でのライフラインに関わる大事故で、国は本気で人の命を守ろうとする意識があるのか疑問だ。コロナから命を守るのと同様ではないか」と話す。さらに「刑事裁判は単なる儀式に過ぎなかった。明治以来100年間変わらない刑法のもとで、実態にそぐわなかった」と振り返る。
そして「企業のコンプライアンス(法令遵守)が問われる時代になったが、東日本大震災での津波で、宮城県石巻市立大川小の児童74人と教職員10人が犠牲になった被害の責任を問い、民事裁判で遺族らが勝訴した例では、学校の防災対策の不備などの過失を認めて市と県に賠償を命じる行政の『組織責任』が問われた。これは私たちの取り組みが多少なりとも影響したのではないか」と語った。
日本では、人の命を奪うような大事故が起きても、誰の責任も問われないということでは、遺族は納得できない。本当に安全な社会のシステムを確立するために、組織を処罰する法律が必要だ」と訴え続けている。
一方、組織罰の導入には「企業活動を萎縮させる」「罰則を設けると企業が処罰を恐れ、真相究明のための協力を得られなくなる」などの慎重な意見もある。
松本さんは、「署名活動をしていると、死刑制度の是非とは違い、YES・NOを問うことが難しいのか、反応が芳しくないことにもどかしさを感じる」と話す。しかし、「だれの過失なのかわからず、単に企業が補償金を支払うだけで済ませるだけでは、再発防止にはつながらない。これまでにない法律を作ることは容易ではないが、訴え続けることが重要だ」と前を向く。
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