顔の片側だけがピクピクと動いてしまう顔面けいれんは、進行するほどけいれん部分が広がって不快感が増し、日常生活に影響が出る場合も。今回は、けいれんが起こるメカニズムや治療方法について、吉田病院付属脳血管研究所(神戸市兵庫区)の吉田泰久院長に詳しく聞きました。
――今回は顔面けいれんについて伺います。まず、具体的にどのような病気なのか教えてください。
皆さんも、自分の意志と関係なく目尻がピクッと動いた経験はあるのではないでしょうか。顔面けいれんとは、顔の左右どちらか一方の目や口の周り、頬の筋肉などがピクピクとけいれんする病気です。症状が軽いうちは一部分に留まっていますが、進行すると顔半分が歪むようにけいれんします。また、けいれんによって目がほとんど開かなくなってしまう人も。そうなると、本が読めず車の運転もできなくなるなど、日常生活に支障が出てきます。
――なぜけいれんは起こるのでしょうか?
顔面神経は、さまざまな顔の表情を作る筋肉「表情筋」を動かす神経です。脳から耳の奥にある骨を通って顔の筋肉へと繋がっているのですが、その間に血管に圧迫されることがあります。血管はドクドクと拍動するため神経を刺激し、勝手に信号が伝わってしまう。それでけいれんが起こるわけです。
――どんな人がなりやすいのですか?
中年以降の女性に多いと言われています。命に関わる病気ではありませんが、患者さんに与えるストレスは大きいですね。人前に出る時は自分の表情が気になりますし、けいれんは緊張するほど出やすいので仕事にも影響を及ぼします。
――治療はどのように進めていくのでしょうか。
まずは薬による治療を試みます。けいれんが落ち着く人がいる一方、眠気やふらつきが出る場合は服薬を続けることは難しくなります。そこで、次に行うのがボツリヌス療法です。けいれんしている筋肉にボツリヌス毒素剤の注射をして筋肉の収縮を止める方法で、効果がなくなる頃(3か月程度)に再び投与することを繰り返します。