途方に暮れたジョニーはロサンゼルス行きの航空チケットを買うのですが、ジェシーはトイレに立てこもってしまいます……。
甥っ子に振り回される主人公・ジョニーを務めるのはホアキン・フェニックスです。『ジョーカー』でアカデミー賞の主演男優賞を受賞した彼が、ヴィランのイメージを覆す優しい役柄を演じています。
ホアキンはマイク・ミルズ監督の脚本を読んで「共感できる瞬間や感情がたくさん描かれている」と感じ、今作への出演を決めたそうです。「(監督と)一緒に何かクリエイティブなことができると思えた。僕から今までとは違う何かをつかみ出してくれるのかどうか、僕に何か新しい視点をくれるのかどうか、ってことだね」といきさつを語っています。
一方、ジェシーを演じるのはウディ・ノーマンで、子役としてずば抜けた演技力を発揮しています。
また、この作品にはジョニーがラジオ番組でインタビューする場面として、9歳から14歳の子どもたちへ実際に取材したインタビューが何度か出てきます。
「未来はどんなふうになると思う?」
「正しい道を進むために大人は何ができたと思う?」
「自分の何かひとつを変えられるなら何にする?」
こうした質問に対して子どもたちが率直に語っていて、子どもの言葉が大人へのメッセージとしてヒューマンドラマのスパイスとなってます。
今作は全編モノクロ映像です。ミルズ監督が“ドキュメンタリー性を盛り込んだ寓話”として表現するためということです。この物語でジョニーとジェシーのふたりは衝突を繰り返しながらもコミュニケーションをやめずに対話を重ね、時間をかけて少しずつ互いを理解していきます。色を意識させないモノクロの映像が、ふたりの言葉のやりとりを際立たせているように感じます。