サッカーのアジアクラブチームナンバー1を決める大会「ACL(AFCチャンピオンズリーグ)」に参戦中のヴィッセル神戸は、1日、グループステージの最終戦に臨み、傑志(香港)に2-2と引き分けた。この結果、2勝2分けで勝点8のヴィッセルは、グループJの1位で決勝トーナメントに進むことが決まった。
試合前にすでにグループステージの突破は決まっていたなか、4月26日のチェンライ・ユナイテッド(タイ)戦からスターティングメンバーを6人変更してこの一戦に臨んだヴィッセル。18歳のルーキーMF日髙光揮選手を先発起用するなど、フレッシュなメンバーが並んだ。そのなかで、前半は引き分け以上で決勝トーナメント進出が決まる傑志のハードプレスに苦しみ、攻め手に欠けたが、44分、FWリンコン選手が得たPKを自ら決めて、先制に成功する。しかし、ハーフタイム直前、逆にPKから失点。前半を1-1で折り返す。
後半開始からMF山口蛍選手に代えてDF櫻内渚選手が入り、さらに64分からは3枚替えを敢行。FW大迫勇也選手、MF郷家友太選手とともに、負傷から復帰したFW武藤嘉紀選手が3月2日のJ1第10節横浜F・マリノス戦以来、2か月ぶりの公式戦復帰を果たす。76分にトップ昇格したルーキーDF尾崎優成選手が公式戦初出場を飾ったのを含め、メンバーやポジションを変えた後半は主導権を握ったヴィッセル。すると87分に得たCKのチャンスで武藤選手がヘッドで鮮やかにゴール。背番号11の待望の復帰弾で土壇場に均衡を破った。これで勝利するかと思われたが、後半アディショナルタイムに入った直後、相手のCKから失点。結局、前戦に続き、引き分けという結果に終わった。
試合後、「自分たち自身、勝ち切りたかったのが本音も、相手が決勝トーナメント進出をかけた戦いということで、少し受けてしまったところもあった。結果は引き分けで終わるも、自分たちのやりたいことはできたと思うので、それは決勝トーナメントにつながると思う」と振り返った武藤選手。復帰後即ゴールを決めたことについては、「長い間チームを離れて、チームに迷惑をかけてしまっていたので、本当に今日はしっかりゴールを取ろうと自分自身は考えていたし、その結果、今日ゴールを取ったが、勝ち切ることができなかった悔しさもある」と述べつつ、「コンディションはまだ100パーセントではないと思うので、自分自身でもっともっと努力していいコンディションに持っていきたい」と、先を見据えていた。
Jリーグでは4分け6敗と苦しみ、現在最下位に低迷。2度の監督交代を経験するなど、いわばどん底の状態で迎えたACLグループステージ。しかも、大黒柱のMFアンドレス・イニエスタ選手を欠くなかでの戦いとなった。それでも、「決勝トーナメントに行くことが1つの目標であるのと同時に、チームとしていかにして戦うか、選手に戦術をどう浸透させていくかを自分たちの課題としてこの大会に臨んでいる」と述べていたロティーナ監督は、チームとともに、その2つのテーマをしっかりと実行。選手たちも指揮官の思いに応え、短期間でも試合を通じて成長の跡を見せた。
ロティーナ監督もグループステージ最終戦終了後の会見で、「このグループステージではあるスタンダードを示せたと思うし、このグループを1位で通過するに値するプレーをできていたように思う。試合を通してミスをすることももちろんあったが、それでも及第点(の出来)であると、自分たちはとらえている」とコメントしている。
あとは、攻撃のバリエーションを増やすことなど、引き分けに終わったチェンライ・ユナイテッド戦と傑志戦で見えた課題をどう克服しながら、勝利という結果を積み重ねていくか。大迫選手や郷家選手らの復調、汰木康也選手や井上潮音選手の台頭、日髙選手や尾崎選手のデビュー、そして、武藤選手の復帰など、収穫の多かったタイでの戦いを力に、名将のタクトのもとで、Jでは反攻に転じていきたい。