一生に一度は手にしてみたいと憧れる人も多いペルシャ絨毯(じゅうたん)。コロナ禍で“おうち時間”が増えたこともあってか、近年、そんなペルシャ絨毯の人気に変化が出てきているという。注目度が高まったきっかけと思われる出来事やバイヤーの裏話、購入の際の店選びのポイントなどを紹介する。
「コロナ禍であまり外出できない中、定番人気は“パラダイス文様”という草木のデザインです。さらに、今年に入って少し変化が出てきていまして……」と話すのは、ペルシャ絨毯を扱う「ラグ&カーペット ティーズ」(神戸市東灘区・六甲アイランド)のオーナーで、ペルシャ絨毯に携わって34年のベテラン・玉木康雄さん。今年に入ってからの変化とは何だろうか?
「『トライバルラグ』(遊牧民の絨毯)に注目が集まっています。インスタグラムなどで有名人の家に敷いてあるのを見て、欲しいという方が増えたようです。以前は、トライバルラグと言っても何のことが伝わらないことも多かったのですが、この単語が一般的な名称になってきたことに驚いています」(玉木さん)
ペルシャ絨毯に初めて触れるという人に、玉木さんは丁寧に歴史から解説していく。「ペルシャ絨毯の歴史は相当古く、とても奥が深いのですが、“ピンからキリまである”ということが何よりのポイントです。産地もごく一部しか紹介されていないことが多いので、多種多様であることを理解していただけるように心がけています」。
数多くのペルシャ絨毯を販売してきた玉木さん。手に入れるのに大変苦労した一枚があるという。
20年ほど前のこと。イランの首都・テヘランで毎年開催されるバイヤー向け展示販売会のポスターに、素敵なアンティーク絨毯が載っており、そのポスターを見た顧客から「価格は問わないのでこの絨毯をぜひ入手したい」と依頼が入った。しかし、展示会に行っても見つからず、なんとか探してたどり着いたものの……実際は、ビンテージではなく新しい絨毯だったという。画像は、加工が施されたものだった。
依頼主に「そのことを報告したら、『じゃあ作ってよ』と言われまして」と玉木さん。その後が、またひと苦労だった。「国民性の違いで、日本人は、オーダーされたらその通りに作ろうとしますが、向こうは、売れるということがわかっているとまともに作業しないことも多いんです。その中で、この人だったら大丈夫だと信じられる人に発注しました」という。そして「2年ほど待ってようやく完成したのですが、描かれていた太陽を『もっと大きい方がかっこいいだろ』と言って勝手に大きくしていて.....。お客さんに伝えると、『それでもいいから買う』と言ってくれたんですが、申し訳ないのでかかったコストだけで販売し、商売にはなりませんでした」。
【「ラグ&カーペット ティーズ」 神戸ファッションマート公式HP内】