牛の生レバー、禁止から10年 代わりとして注目「馬ならOK」な理由 馬肉専門店に聞く | ラジトピ ラジオ関西トピックス

牛の生レバー、禁止から10年 代わりとして注目「馬ならOK」な理由 馬肉専門店に聞く

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 牛の生食用レバーの販売・提供が禁止され、10年が経とうとしています。塩とごま油にくぐらせて食べる「あの味」が禁止になってしまった時の落胆は今でも思い出せますし、今の10代、20代の中には牛の生レバーを食べたことが無いという人がいると聞き、時の流れの早さを感じます。禁止になった原因は、ユッケなど牛の生食による食中毒が多発し、時には多数の死者が報告されたことによります。

 牛の生ユッケは、今でも加熱処理をして加工することを条件に販売・提供することができますが、コストが高くなるため、提供できる焼肉店が高級店などに限られるようになりました。一方で、牛の生レバーはどのような加工を施しても安全性が確保できないため完全に禁止、合法的に提供が可能な店は一切無くなっています。

 そんななか、代用として注目されたのが「馬の生レバー」です。馬肉専門店では生食用の馬肉が提供され続けていますが、なぜ「牛の生食はダメ」で「馬の生食はOK」なのでしょうか。馬肉の専門店「大衆馬肉酒場 馬王 堺筋本町店」の店長・武藤さんに聞きました。

 馬と牛の大きな違いは「反芻(はんすう)動物」であるか否かです。牛・羊・鹿など胃を複数持つ反芻動物は腸内に「O-157」など、腸管出血性大腸菌を保菌している可能性があり、食肉に加工する段階で肉に付着するリスクがあります。一方で、馬は胃が一つしかなく腸管出血性大腸菌を保菌しているリスクが低いのです。また、牛や豚に比べて馬は体温が高く、40度ほどあるため雑菌が繁殖しにくいという特徴も持ちます。

牛は胃を複数持つ反芻動物。馬はひとつしかない。

 しかしながら、馬の生肉に一切食中毒の心配がないというわけではありません。馬は牛とは別に寄生虫による食中毒のリスクを持ちますが、これは生食用の馬肉にマイナス20度で48時間以上の冷凍処理をすることを義務付けることで、食中毒のリスクを回避しています。店は冷凍処理された馬肉を仕入れ、安全な体制で生食の提供を行っているのです。武藤さんは「店での保管など、取り扱いに十分に気を使っている」といいます。牛に比べ食中毒のリスクは低いとはいえ、業界の努力によって馬の生食文化は守られているのです。

「大衆馬肉酒場 馬王 堺筋本町店」では、馬の「生レバー刺」のほか、「馬刺5種盛り」などのメニューを提供しています。22年春からは、赤身肉とねぎとろをたっぷり使った総重量1.1kgの「馬肉ユッケ丼マウンテン」という驚きのデカ盛りメニューの提供も始めました。武藤さんによると、「これを牛のユッケでやれば倍の値段はするでしょう」とのこと。

「大衆馬肉酒場 馬王 堺筋本町店」で提供されている、馬の「生レバー刺」
「大衆馬肉酒場 馬王 堺筋本町店」で提供されている、馬の「生レバー刺」
「大衆馬肉酒場 馬王 堺筋本町店」で提供されている、「馬肉ユッケ丼マウンテン」。総重量はなんと1.1キロもある
「大衆馬肉酒場 馬王 堺筋本町店」で提供されている、「馬肉ユッケ丼マウンテン」。総重量はなんと1.1キロもある

 高タンパク低脂肪・低カロリーで美容と健康面からも注目されている馬肉。「牛の代用品」ではなく、「生食肉といえば馬」という認識が、これからもっと広がっていきそうです。

(取材・文=宮田智也 / 放送作家)


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