■距離がもたらす“地元”との「新たな出会い」
現在は地元を離れ、神戸と大阪の中間に位置する兵庫県西宮市で暮らしているこもりさん。今年2月に、ブログサービス「note」で「STAY KOBE」という記事の発信を開始した。「神戸を題材に活動しながら、神戸に住んでいない」という“負い目”もあった中、転職・引っ越しをせずとも神戸の魅力を伝えられるか、試す思いで始めた。
神戸へは、月に2~3回、休日を利用して出向くという。桜のタイミングに合わせるため有給を使ったことも。事前に多くを調べ過ぎずに歩き回った方が面白いものに出会えるのだそう。懐かしい地域や、地元であまり行ったことのなかった場所も巡る。
構想は、撮影した写真の色味のバランスを考えながら練るという。記事を書き始めてから、以前より神戸に行く頻度が上がって「充実している」のだとか。
■「地元の魅力」とは?
こもりさんの地元は神戸市内の西の方に位置する垂水区。「地元の魅力」を尋ねた。
「ファッション・グルメ・歴史・アウトドア全てにおいて楽しめるところだと思います。坂の上から景色を眺めると胸がいっぱいになります」(こもりさん)
垂水区には、漁港があり、山手には「五色塚古墳」もたたずむ。坂だらけの住宅街からは海の絶景を望める。また垂水区と、隣接する須磨区には、かつての「播磨国」と「摂津国」の国境という、歴史的要素もある。神戸は、明治期の開港でハイカラ文化が花咲いた土地であり、それより前には源平合戦や平家物語の舞台だった。大学では歴史を学んでいたこもりさん。その頃はあまり興味のなかった地元の歴史も、今後の活動で掘り下げていきたいという。
STAY KOBEには、「帰れないけど帰った気になれる」という読者の声も寄せられる。ローカル番組ですら取り上げられないような内容の記事というのはうれしいものだろう。
「神戸」と聞くと、一般的にはメリケンパークや北野地区に代表される海、港、異人館など“なんとなくオシャレ”というイメージがあるかもしれない。しかし、市内には下町もあれば、山を挟んだ向こうでは有馬温泉街が風情を漂わせる。読者から取材先の提案もあるそうで、それによって、また知らない場所を見つけられる好循環が生まれているという。地元=ふるさとを身近に感じられるぬくもりとつながりが、そこにはある。
(取材・文=たかやまそら)