彼女を支えるトウケイ動画のチーフプロデューサー行城理(柄本佑)は、やり手だが、瞳に無理難題を吹っ掛ける。作品をヒットさせるためには手段を選ばず、グイグイ攻めていくという“くせ者”タイプ。
一方、同じ時間帯にオンエアされるライバル作品『運命戦線リデルライト』(通称リデル)を手掛ける監督は、天才といわれながら、このところ低迷している王子千春(中村倫也)。「スタジオえっじ」のチーフプロデューサー・有科香屋子(尾野真千子)がその才能を信じ、彼の再起をかけ8年ぶりに起用したのだ。伝説の作品『光のヨスガ』で鮮烈な監督デビューを飾ったのが、28歳の時。その後ヒット作に恵まれず、もう後がない崖っぷちの王子にとって、今回は絶対に負けられない戦いだった。
そして瞳にとっては、その『光のヨスガ』こそ、アニメの世界を目指すきっかけになった運命の作品だった。ハケンアニメを目指す二人の闘いの火蓋は、切って落とされた!
監督は大阪出身の吉野耕平。CMプランナーやMVディレクターを経て、CGクリエイターとして新海誠監督の『君の名は。』(2016年)に参加。2020年『水曜日が消えた』で、劇場長編監督デビューしている。
主題歌「エクレール」は川谷絵音(ゲスの極み乙女。など)の作。演奏には、テレビ番組の企画から生まれたバンドで、吉本興業のお笑いタレント・小薮千豊や、くっきー!らと組んだ「ジェニーハイ」に、この映画に出演する人気声優の高野麻里佳がゲストヴォーカルとして参加。高野が『サバク』の主人公トワコ役を務めるアイドル声優の群野葵役で、実写映画に初出演しているのも話題の一つだ。他にも、梶裕貴、潘めぐみ、高橋李依、堀江由衣ら、今を時めく人気声優たちが劇中の2つのアニメのヴォイスキャストに名を連ねている。
アニメの制作現場では、監督の下に、作画監督、美術監督、撮影監督に色彩設計、脚本家に編集、アニメーターに制作デスクや宣伝プロデューサーなどなど、本当に大勢のスタッフがかかわっていることもしっかり描かれていて、仕事人たちのこだわりの群像劇+アニメ作品が楽しめ、お得感満載。
辻村深月の最新刊は『レジェンドアニメ!』は、『ハケンアニメ!』のスピンオフ小説集なのだが、その中で書き下ろされた『ハケンじゃないアニメ』は、おすすめ! 本当のハケンアニメとは? が、分かるはずだから…。(増井孝子)