昭和の大ヒット文具「アーム筆入」。「象がふんでもこわれない」というCMを覚えている人も多いのでは? 57年前に誕生した筆入れ、じつは今も子どもたちから注目を浴びています。その理由は何なのか。令和の人気の傾向は? 製造・販売を手がけるサンスター文具株式会社 広報の小須田はるかさんに聞きました。
まずは、歴史から。1965(昭和40)年に発売された「アーム筆入」。当時主流だったプラスチック製は落とすと割れやすく、セルロイド製は引火しやすいという危険性もありました。そこで「子どもたちが安心して長く使える筆箱を作りたい」との思いで誕生したのがアーム筆入です。ところが、信号機のレンズ部分にも使われる衝撃に強い素材ポリカーボネートを使っているため、価格はプラスチック製の4~6倍(当時の価格で200~300円)。高価な上、見た目はプラスチック製と変わらないことから、なかなか売上は伸びず……。
そんな中、商品発売から2年後にテレビCMを放映したところ、爆発的にヒット! 象が筆入れを踏むインパクトある映像と、「象がふんでもこわれない」のキャッチコピーは社会現象にもなりました。5~6年後には、年間販売数が500万本に! 売上は当時の価格で15億円にものぼりました。
小須田さんは、「今の子どもたちには、(中が透けている)クリアな素材やメッシュ素材の筆入れが人気」と話します。クリア素材の人気に伴い、アーム筆入も再注目されているようです。“丈夫で長持ちする”点も好評だそう。何度も筆入れを買い替えなくて良いのは、親にとってもうれしいポイントです。大阪の私立小学校の中には、6年間使える筆入れとして、学校指定教材で全生徒が使用しているところも。また、「レトロかわいい」見た目は大人の女性をもとりこにしています。
ほかにも、最新作には面白いものが……。オンライン授業など、スマートフォンを活用した学習の機会が増えたことにより誕生したのが、スマホスタンドの役割を果たす筆入れ。前面部分が開き、横・縦どちらの向きにもスマホを置くことができます。コロナ禍ならではのヒット商品です。
小中学生の必需品でもある筆入れ。今も進化を続けています。あなたはどんな筆入れを使いたいですか?
(取材・文=岡本莉奈)
サンスター文具株式会社
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