大阪教育大付属池田小(大阪府池田市)で2001年に起きた校内児童殺傷事件から8日で21年となり、犠牲になった児童8人を追悼する「祈りと誓いの集い」開かれた。眞田 巧・学校長の言葉(原文のまま)は次の通り。
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今から 21年前の平成13年(2001年)6月8日、この時間に不審者の侵入を防 ぐことができずに、8人の児童の尊いいのちが奪われ、13人の児童と、2人の教員が 傷つけられるという大変悲しくつらい事件が起こりました。
当時は、「学校は安全なところである」という根拠のない思い込みにより、不審者侵 入に対する想定ができていませんでした。学校として、迅速な対応や組織的な対応が取 れなかったため、子供たちを守ることが出来ず、保護者をはじめ多くの方々に悲しく、 つらい思いをさせてしまうことになりました。
現在では、安全に配慮され設備が整った校舎で子供たちは学ぶことができています。 教職員は、当時の教職員の思いを受け継ぎ学校安全の取り組みを進めています。8家族 の皆様、本校保護者、地域の方々をはじめ、本校に関わってくださる多くの方々が、本 校の教育活動を見守り、支えてくださっています。このような一日一日の取り組みが積 み重なり、一年一年の取り組みが積み重なり現在にたどり着きました。学校の安全を保障する近道はありません。これまでのような地道な取り組みを継続していくことが大切であると考えています。
児童は、今年も校長室の8人の写真に会いに来てくれます。事件に対する自分の考え をまとめたいと、8人の写真の前で作文に取り組む 6 年生児童がいました。校長室にや ってきて「事件のことを教えてください」と、直接私に声をかけてくれる 3 年生の児童 がいました。安全科の授業では、学校の安全設備について調べたり、撮影などをしたりする中で、その仕組みや必要性について真剣なまなざしで質問してくる児童もいます。
教職員は、事件当時の教職員の思いや願いに寄り添い、自ら進んで現在の全国の学校 を取り巻く安全の課題について情報収集し、今自分たちができうる学校の安全対策につ いて熱心に語り合ってくれています。設備に頼ることのない不審者対応訓練の在り方や 安全科の授業の充実にも力を注いでくれており、学校ホームページなどにおいて、学校安全に関わるそれらの取り組みを発信してくれました。
しかしながら、この一年の間で、子供が巻き込まれる悲しい事件が今もなお続いてい ます。国内では、登下校中の交通事故により尊い命が奪われたり、大きな事案にならなくても、子供や学校の安全が脅かされたりする事件、事故は日々起こっています。海外では、国家の侵攻により学びの場であるべき学校が標的になったり、小学校が銃の惨劇に見舞われ、たくさんの命が奪われたりするという悲しい出来事が起こっています。一個人や一つの学校では対応できない事案ではありますが、このようなことが現実に起こっていることに、無力感を感じ、目を背けていては、学校の安全を守ることにつながりません。
本校として微力ではありますが、これまでの地道な取り組みを継続するとともに、近 隣の学校のみならず、全国の学校や関係機関と手をたずさえて、それぞれの経験や知見 を情報交換し、安全管理の徹底と、教育の力によって、人を傷つける側の人間ではなく、 自他のいのちを大切にし、人を守る側、支える側の人間を育てることを引き続き目指し ていきます。
また、今年 3 月に閣議決定された「第3次学校安全の推進に関する計画」では、全て の児童生徒等が自ら判断し、主体的に行動できる資質・能力を身に付け、学校管理下に おける死亡事故を限りなくゼロにし、障害や重度の負傷を伴う事故を中心に減少させる ことを目指しています。この計画には、本校で取り組んでいるSPS(セーフティ・プ ロモーション・スクール)活動がモデルとして採用されるべきであると示されています。 その責任の重さを感じつつも、学校安全をリードすべく責務を果たなければならないと考えています。
さて、今年も、新型コロナウイルス感染症の拡大防止のため、教育活動に制限がある中での今日を迎えています。しかしながら、少しずつですが、学校が本来の姿を取り戻す中でこの集いを実施できるようになっており、今回も前年より参加していただける方々を増やすことが出来ています。本校としては、今できることを確実に実施することによって、この集いを国内外の方々に知っていただき、学校安全の取り組みの重要性を 発信することを通じて、それぞれの場所で子供を守る取り組みがさらに前進するきっかけとなることを強く望みます。
最後になります。事件で亡くなられた8人のみなさん、みなさんが大好きだったこの 附属池田小学校は、引き続き、日本中の学校とさらには世界中の学校と手をたずさえ、 学校が安全で安心して学べる場所であるようにこれからも努力を続けます。
この場所にいる大人は、決して事件を風化させることなく、目の前にある「祈りと誓 いの塔」が建てられたその深い思いを受け継いでいけるよう努力を続けていきます。
令和4年6月8日
大阪教育大学附属池田小学校長 眞田 巧