はい。「好きな絵を描いてごらん」と言われてすぐに描いて、2時間ぐらい経つとそれが、自分の思い描いたイメージ通りの帽子となって現れたんです。ハンチング帽をデザインしたんですが、本当に素晴らしいきっかけ、出会いに恵まれたと思います。(その出来事があるまで)自分がデザイナーとして帽子を作るとは考えてもいませんでした。
――世界を旅されていたそうですね。それも帽子と関係しているのですか?
はい。25歳の頃から、バックパッカーをしながら世界を旅していました。帽子を作る上で「本物を作りたい」と。どの国に行けばいいのか? 夏の王様と言われている「パナマハット」を学ぶために、何も分からない状態で行ったエクアドルでは職人さんに出会いました。今でも付き合いがあります。
――帽子をつくる上で大事にしていることは?
消費社会、大量生産のこの時代に違和感を覚えていました。なので私が作る帽子は、数量限定で6個までしか作らない。夏物の帽子はエクアドル、冬物の帽子はフィレンツェ(イタリア)で。そこだけはブレないようにしています。縫製は“メイドインジャパン”です。
私が作る帽子には名前があるんです。ものづくりは人が関わっているため、それぞれの思いを大切にしたいので、全てに名前をつけていますね。
――ひとつの帽子を作るのに、どれぐらいの時間をかけているのですか?
ものにもよりますが、布物の帽子でも3か月はかかります。パナマハットだと、手編みで作っているので、職人さんは1個作り上げるのに2〜3時間のかかるものだと、半年から1年かけて完成する帽子もあります。
――新しい作品をイメージするためにしていることは?
色んな世界に足を踏み入れていく、色んな人と話をする……。また、美しい景色を見たりしています。家の近くに六甲山があるので、登山道を三宮のお店まで4時間かけて歩いたりします。自然(の中)に身を置くことも大事ですね。これは僕のものづくりの原点でもあります。
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7月には東京・銀座に新店舗を構える「KOJI YAMANISHI」。しかし、どれだけ活躍の場が広がっても、KOJI YAMANISHIさんは「神戸」を忘れることはないと言います。それは、1995年、高校1年生の時に阪神大震災を経験し、神戸が傷つく姿を見たからだそうです。そして、2011年の東日本大震災、新型コロナでのお店のオープン延期と、つらい出来事が降りかかってきました。
それらの困難も、人との出会いに恵まれ乗り越えてきたというKOJI YAMANISHIさん。神戸を忘れることなく、こだわりにこだわった帽子を神戸から発信したい。その気持ちは今も心の中で息づいています。
思いを込めて作った限定もの帽子を、一人でも多くの人に被ってもらえるように。「KOJI YAMANISHI」の挑戦はまだまだ続いていきます。
(取材・文=メタボリック狩森/放送作家)
◆「KOJI YAMANISHI」
住所:〒650-0022 神戸市中央区元町通3-9-23 ナカシンビル1階
最寄り駅:JR・阪神元町駅
営業時間:10:00~19:00
定休日:不定休
TEL:078-599-7525
【公式HP】