一方、彼らのことを刑事たちが密かに尾行していて、現行犯逮捕しようと張り込みを続けます……。
今作は是枝裕和監督が長年温めてきた企画で、初めての韓国映画です。
赤ちゃんポストは、韓国では「ベイビーボックス」と呼ばれ、2009年からの10年間に1800人を超える子どもが預けられていて日本のおよそ10倍に上ります。
是枝監督は脚本を書きながら韓国内で取材し、ベイビーボックス出身の子どもたちが「自分は生まれてきてよかったのか」と葛藤することへ答えられる作品にしたいと考えた、と思いを語っています。
赤ちゃんを売りさばく主人公サンヒョンを演じるのは映画『パラサイト 半地下の家族』で知られるソン・ガンホです。サンヒョンとともに子どもを横流しする児童養護施設出身のドンスはカン・ドンウォン。赤ちゃんの母親ソヨンはイ・ジウン(歌手名IU)です。
是枝監督によると、主演のソン・ガンホは撮影中いつも予定より早く現場に来ていたそうです。
ソン・ガンホは監督に「昨日、つないだものが見られるなら見せてくれ」と伝えて自分の芝居を含めて編集された場面を全部見るそうです。これが頼りになった、と是枝監督が明かしています。各シーンを見てソン・ガンホは「最高だったけど、僕のセリフ、いま使っているテイクじゃない、2つくらい前に言ったのがあると思う。おそらく監督が切り取ったところだけだと、セリフにニュアンスまでは伝わらないかもしれないから、もう一度、比べてみてくれ。最終的な判断は監督に任せるけど、ぜひ比べてみてほしい」と告げるのだそうです。
ソン・ガンホは普段から同じシーンでもテイクごとに異なる演技をしていて、全部覚えているということです。「すごく助かりました。彼はテイクごとに違うので、それを僕がどこまで追えているか? 言葉はわからないので、それを補ってくれているのかなと思いました。自分の芝居に対する基準がかなり高いんです」(是枝監督)
監督は「(今作でソン・ガンホが)最後の最後まで一緒に走ってくれました」と語っていて、強い信頼を感じるエピソードです。
里親を探す旅には、ドンスが育った児童養護施設にいる少年も加わり、他人だった彼らの絆が徐々に深まっていきます。今年のカンヌ国際映画祭で主演のソン・ガンホが男優賞を韓国人俳優として初めて受賞。作品として人間の内面を豊かに描いた作品をキリスト教系団体が選ぶエキュメニカル審査員賞を受賞しました。映画『ベイビー・ブローカー』は6月24日(金)公開。(SJ)