大阪に夏の訪れを告げる恒例の行事「船乗り込み」が29日、大阪市内で行われた。コロナの影響で2年連続中止となっており、開催は3年ぶり。中村鴈治郎さんや松本幸四郎さんら歌舞伎俳優が顔見せし、7月3日に大阪松竹座(同市中央区)で開幕する『七月大歌舞伎』のPRも行った。
従来であれば、市内を流れる川の両岸に詰めかけたファンらが船上の歌舞伎俳優たちに声援を送るにぎやかなイベントだが、今回は、コロナ感染対策として一般の観覧自粛を呼び掛け、初めてライブ配信が行われた。
途中、浴衣姿の役者たちを乗せた船がお囃子(はやし)の音色とともに終着点の戎橋東側に近づくと、紙吹雪が一面に舞い、通りかかった人たちから歓声が上がった。奈良県葛城市の男性は「久しぶりの船乗り込みが見られて良かった。やっといつもの夏が来た感じ」と笑顔を見せた。
この後、大阪松竹座の舞台で式典が行われ、体調不良のため当面休演することが発表された人間国宝の片岡仁左衛門さんについて、長男の孝太郎さんは「父は『公演期間中に戻る』と言っていました」と報告。そして、仁左衛門さんが演じる予定だった夜の部「堀川波の鼓」で代役を務める中村勘九郎さんは「(仁左衛門さんが)安心して帰って来られる舞台を作りたい」と言葉に力を込めた。また、松本幸四郎さんは「船乗り込みのお囃子が鳴り始めたとき、感無量だった」とかみしめるように話した。
公演は7月24日まで。
(取材・文=青木理子)