林歳彦氏(会社経営者・環境活動家)とフリーアナウンサーの田中大貴(元フジテレビアナウンサー)がパーソナリティーを務めるラジオ関西『としちゃん・大貴のええやんカー!やってみよう!!』。2022年6月27日放送回に、柔道元韓国代表の大野義啓さんがゲスト出演。柔道教室やリハビリデイサービス事業など、多彩なセカンドキャリアを歩む大野さんが、今の思いを語った。
兵庫県神戸市出身の大野さんは大蔵中学校(明石市)、作陽高校(岡山県津山市)を経て、名門・天理大学体育学部に進み、厳しい環境のなかで柔道に邁進。韓国籍ということもあり、韓国代表として国際試合に出場すると、アジア大会100㎏超級で3位、世界選手権無差別級でベスト8など実績を残した。2007年に現役を引退後、大阪市平野区に鍼灸整骨院を開院するほか、サッカー元日本代表選手のパーソナルトレーナーを担当した経験も持つ。現在では柔道教室「柔心塾」代表として後進の育成に取り組むほか、リハビリ特化のデイサービス事業「dream factory株式会社」を起業するなど、多岐にわたって活躍している。
柔道家のセカンドキャリアとして“起業”するのは、柔道界の中では比較的珍しいケースだと言う大野さん。介護事業に参入したきっかけは「整骨院での体験」だったという。
「整骨院で毎日おじいちゃんおばあちゃんと顔を合わせていると、家族以上の親近感を抱くんですよね。そんな中で3年、5年経つと70代だったお客さんがいつの間にか80代になっていたり、歳を重ねていくところを間近で見ることになるんです。すると、『入院した』『調子が悪くなった』『歩いて来院するのがしんどくなった』という理由で会えなくなる人がいる。それが寂しかったですね」(大野さん)
そこで大野さんは、スポーツトレーナー時代に得た「痛みを取るだけではなく、元の状態に戻ること、動けるようになることが本当の意味での“元気になる”ではないか」という学びを活かし、高齢者が運動できる場を院内に設置したのだそう。しかし、整骨院はあくまで治療がメインの施設。サービスの一環で設置したスペースに人やお金を割けず、整骨院としてできることの限界を感じていたと話す。
そんなとき、介護業界内でリハビリの需要が高まり、デイサービス事業でもリハビリを行える制度ができたことを知った大野さんは、これを機に大阪市平野区にドリームファクトリー株式会社を立ち上げた。現在は、リハビリ特化のデイサービス施設を3拠点運営しているが、最近、新たなチャレンジとしてグランピング施設の運営にも着手。その理由は、介護事業の存続と密接にかかわったものだった。
「経営者になって、スタッフの中には一家の長として稼がないといけない人や、今後結婚して子どもができるであろう人もいる。そんな人たちのために収入を上げたいけど、介護は保険事業だから天井がある……という悩みが出てきたんです。今いるスタッフと長く一緒に働くためには、事業展開をちゃんと考えないといけない。現場だけを良くするという目線ではいけないんだと気付きました」(大野さん)
ただし、新型コロナウイルス感染拡大の影響は、大野さんの事業にも直撃。「そりゃピンチでした」と振り返るが、国の補助を受けるため様々なことを勉強した際に「事業再構築補助金」の存在を知る。そこで新規事業への扉を開くことになったという。
「簡単に言うと、この補助金は『現状打破のために事業革新する企業を支援する』という制度。僕もこのピンチをチャンスに変えようと思い、この制度を使用することになった。でも何をするのか分からず、同業者の知人に相談したんです。そしたら『発達障がいのある子や、その親が楽しめるグランピング施設の運営を考えている』という話を聞けて……。僕自身、コロナ禍の影響で外出が制限されている中、自分の子どもたちにどう成長してもらうか考えてアウトドアによく連れて行ってたんです。そんなこともあり、知人の話を聞いてピタッとくるものがあって、兵庫県丹波市にグランピング施設を立ち上げました」(大野さん)