「一般論になりますが、書店の数が大幅に減り、電子書籍の売り上げは年々増加してきています」と電子書籍の変遷を語るのは秋田書店。
「2000年代後半、ガラケーでの『ブックサーフィン形式』(マンガをコマ単位で見せていくもの)での販売が普及して、各出版社のマンガの売り上げが上がりました。続いて、2010年ごろに『Kindle』や『ibooks』を筆頭に、ページ単位で見せる電子書籍サービスが次々と立ち上がってきました。そして2015年前後から現在にかけては『LINEマンガ』や『ピッコマ』など、アプリ形式のマンガサービスが流行しています」(秋田書店)
一方、白泉社は、冒頭の「出版科学研究所」によるデータに触れ、「この売上増は、紙から電子書籍に乗り換えた人が多いためでしょうが、それにくわえて今まで本やマンガに触れてこなかった読者を掘り起こしたのでは」と推測します。
「電子書籍がメジャーになるまでは、紙の本全体の売行きは右肩下がりでした。しかし、 コロナ禍での巣ごもり需要から電子書籍の売り上げが伸び、コロナが落ち着いてからは むしろ電子書籍でのヒットから、書店で紙の本を買う動きにもつながりました。そして2021年には、マンガ業界での紙+電子書籍の総売上が、紙の本オンリーの最盛期を上回る結果になりました」(白泉社)
コロナ禍にともない、多くのマンガサイトやアプリで作品の無料公開キャンペーンがおこなわれたことは記憶に新しいはず。そんな動きも後押ししてか、普段あまり読書をしない層も本を購入するようになり、結果として、電子書籍だけでなく紙の本の売上も伸びているということがわかりました。
有識者のなかには、電子書籍の発展にともない「紙の本は消える」と予測する人もいますが、双方の長所を生かして共存していく未来もありえるのかもしれません。