『貫(ぬき)”』は京都の世界遺産、清水寺・本堂(国宝)「清水の舞台」の懸造り(かけづくり)をイメージするとわかりやすく、垂直と水平を基本とする。懸造りは格子状に組まれた木材が互いに支え合い、衝撃を分散し高度な耐久性を保つことができる。
万博閉幕後、再利用(リユース・リサイクル)のための解体や移設を踏まえても、貫の工法は「差し込んでくさびを入れる」解体時も簡易であることから有益だとの結論に至ったという。
大屋根といえば、1970年千里丘陵で開催された大阪万博の「お祭り広場」を思い浮かべる人も多い(大阪万博の大屋根は建築家・丹下健三氏の設計で、鋼管を三角形に組んでつなげた立体トラス構造・1978年解体)。大屋根をジャッキによるリフトアップ工法で持ち上げ、それを芸術家・岡本太郎氏デザインの太陽の塔が突き破るイメージは象徴的だ。
今回の大屋根は、日本の多様な気候の中で、多くの方々を招く際の快適さと、導線としての役割も考慮して、雨風、直射日光をさえぎる滞留空間となる。
2025年大阪・関西万博会場の人工島・夢洲(ゆめしま 大阪市此花区)は、周囲が護岸で、眺望のうえで海上が見渡しにくい点が課題だった。
このため1か所の展望台ではなく、屋上からは会場全体を見渡すことができる大屋根リングを通路として、そこから外に目を向けると、瀬戸内海の豊かな自然や夕陽などの眺望が楽しめるようにした。地上からリングへのアクセス方法はエレベーター、エスカレーター、階段となる(避難経路含む)。
藤本氏は大屋根を「海に浮かぶ夢洲で開かれる万博の意味を考え、巨大な屋外劇場のようなイメージ」と説明した。
そして「『いのち』は生態系の1つであり、多様性を受け入れながら『つながる場』となるというコンセプトで、大屋根のリングによって1つの空を切り取り、この空を世界中が共有しているということを表現した」と締めくくった。
木材調達などの状況にもよるが、早ければ2023年4月にも、大屋根の建設を開始できる準備を進めたいとしている。
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今回、会場内のパビリオンの場所や広場の名称も新たに公表された。また、当初の基本設計を踏まえ、万博開催時の姿をより具体的に表現したパース図を新規に作成した。会場配置図には、民間パビリオンの出店場所が明記され、「広場」などの名称も加わった。
大屋根の周辺は「光の広場」。このほか「ウォータープラザ」「大地の広場」「空の広場」と命名され、「風の広場」も設置される。
これまでに日本で開催された万博のコンセプト(例・大阪万博「人類の進歩と調和」)などから普遍的な価値に焦点を当て、世界が連携して守るべき大切なものをレガシーとして引き継ぐために「進歩の広場」「調和の広場」も新たに名付けられた。