サッカー・J1のヴィッセル神戸は16日、明治安田生命J1リーグ第22節で、鹿島アントラーズとアウェイの県立カシマサッカースタジアムで対戦する。キックオフ予定は午後6時。
清水エスパルス、ジュビロ磐田との下位直接対決で激闘を制するなど、J1で3連勝。さらに、ミッドウイークの13日に行われた天皇杯(天皇杯 JFA 第102回全日本サッカー選手権大会)4回戦では、リーグ戦から先発を9人入れ替えたなかでも、強敵の柏レイソルに2-1と勝利した、ヴィッセル。チームの総力で公式戦4連勝を達成できたこともあり、クリムゾンレッドはさらに勢いを増している。
そのなかで迎える、鹿島戦。この一戦での注目は、なんといっても、FW大迫勇也選手の古巣・鹿島との初対戦、そして、カシマスタジアムへの凱旋だ。今シーズンはけがでコンディションが万全ではないこともあり、前半戦では持ち味を発揮しきれず、悔しい日々が続いていた大迫選手。それでも、現在はスーパーサブとして2試合連続で決勝点を決めるなど、日本を代表するストライカーが底力を発揮。背番号10の存在は、ヴィッセルにとってやはり欠かせないものだ。このたび、2009年から5シーズンにわたって在籍した慣れ親しんだ地に9年ぶりに戻るなか、凱旋ゴールへの期待はふくらむばかりだ。
ただし、相手の鹿島は、ここまでJ1で2位と、優勝争い中の常勝軍団。最近こそ2引き分け中だが、今シーズン、チームに復帰したFW鈴木優磨選手を中心にアグレッシブ、かつ、勝負強い戦いを展開中だ。ヴィッセルも3月11日のJ1第4節では、その鈴木選手のゴールなどで0-2と完敗している。
「自分が分析する限り、今2位にいるというのは本当に理解できるし、素晴らしいチーム」と相手をリスペクトするのは、吉田孝行監督。「何がすごいかというと、攻撃がすごく速い。奪ってからの攻撃が本当に早く完結する。球際についてはたぶんリーグ1の強さだと思うし、そこから1タッチで前につけて、そこでみんなで攻撃していくというようなチーム。そこのトランジションと球際のところは対策を取らなきゃいけないと思っている」と、鹿島を警戒する。
それでも、3月の対戦のときに比べて、ヴィッセル本来の力も徐々に出てきており、その試合のときからはメンバーも変貌。司令塔のMFセルジ・サンペール選手は負傷による長期離脱中で不在だが、当時けがで欠場していた大迫選手や日本代表FW武藤嘉紀選手が復帰して前線を活性化しているだけでなく、同じく日本代表に選ばれたMF橋本拳人選手という、吉田監督いわく「チームの心臓」として中盤で大車輪の活躍を見せるボランチが今の神戸にはいる。当然、MFアンドレス・イニエスタ選手も臨戦態勢。天皇杯4回戦では84分からの出場ながらすぐにチームを活気づけるあたりは、やはり大黒柱。今回の試合は満を持してスタートからピッチに立つことが濃厚だ。攻撃的GK飯倉大樹選手の攻守にわたる奮闘や、DF初瀬亮選手、FW佐々木大樹選手、DF山川哲史選手ら最近の試合での若手の活躍も見逃せない。吉田監督のもと、「奪い切る」守備をベースに攻撃への勢いも出てきたヴィッセル。中2日というタイトな日程での試合だが、自信を持って臨める状態はできている。
さらに、この一戦からは夏の移籍ウインドーで獲得した選手たちが出場可能に。今シーズンの韓国Kリーグ・得点ランキングトップ(14得点)という実績をひっさげて港町にやってきたモンテネグロ代表の長身FWムゴシャ選手と、サガン鳥栖から獲得した進境著しい右サイドのスペシャリスト・MF飯野七聖選手が、いよいよベールを脱ぐ。「自分の特長はどんどん前に行って、仕掛けて、クロスをあげて、走って、戦ってというスタイル。夏のタイミングで来たというのは、自分のプレーを最大限評価されてオファーをくださったことなので、自分の持っているものを最大限還元できるように覚悟を決めて来た」(飯野選手)、「自分に課せられているのはゴールすること。自分の100パーセントをチームに注いで、すべてを出し切って、チームの助けになるようにプレーする」(ムゴシャ選手)。決意をもってクリムゾンレッドのユニフォームに袖を通す、心強い新戦力が、どのような形でヴィッセルでのデビューを果たすのかも見逃せない。
16位にあがってきたとはいえ、まだJ1残留争いの渦中にいるヴィッセルは、とにかく一戦必勝が求められる。カシマスタジアムでは最近8試合負けなし(5勝3分け)という相性のよさも追い風に、今回もヴィッセルが狙うは勝点3。「チーム状況は非常に良いが、もう一度、気を引き締めて、しっかり勝って中断期間を迎えたい」と吉田監督。上位を敵地で倒して、神戸の力が本物であることを示したい。