『新明解日本語アクセント辞典 第2版』(三省堂)を開くと…
ここまで紹介した3種類が、頭高、中高、平板の順ですべて掲載! つまり、すべて通常のアクセントとしてあり得るということです。しかも、多くのプロが指針としている『NHK日本語発音アクセント辞典』(NHK出版/2016年5月)に載っていたのは、なんと頭高だけ。「平板型しかありえない」と思っていた奈良出身の私は、思わず声を上げるほど驚きました。
そうこう調べているうち、奈良県橿原市の橿原市昆虫館で「特別展『ぶんぶん』~にぎやかなカナブンの世界~」が、ちょうど開かれていることがわかりました。そして、橿原市公式サイト内の同展の紹介ページには、「ぶんぶん」という表現は、奈良や近畿で広く使われている旨の説明が…。そこで、同館に電話して聞きました。
応じてくださった担当者は、兵庫県神戸市出身だそう。ご自身は「ぶいぶい」と呼んでいたそうです。担当者の話によると、昆虫の全国での呼び方をまとめた「方言辞典」があり、「かなぶん」についてもかなり多くの呼び方が載っているとのこと。同館内では、そんな珍しい呼び名を発掘できればという思いから、「かなぶん」の呼び方などについてのアンケートも行っているのだそうです。
これまでのところ、圧倒的に「かなぶん」という回答が多く、他に「ぶんぶん」や「ぶいぶい」などが集まっているそうです。担当者は、「今後、ある程度数がまとまった段階で、呼び方についても紹介できれば…」と話していました。特別展では、身近なものから珍しい種まで、かなぶんが、標本と生体、解説パネルなどで紹介されています。会期は2022年9月25日(日)までです。
言葉は時代や地域で、表現や意味も使い方も変化します。「ことばコトバ」では、こうした言葉の楽しさを紹介していきます。
(「ことばコトバ」第65回 ラジオ関西アナウンサー・林 真一郎)