今回は初めて、奄美大島在住のプロのデザイナーさんたちに企画を依頼してポスター制作をしました。おかげさまでアイキャッチのあるポスターに仕上がり、大きな反響をいただくことができました。インターネット、SNSの拡散力の高さにも驚いています。MITSUIさんに企画・構想を練っていただき、尚味さんが素敵なロゴやケンムンのデザインをしてくださいました。
ただ制作を依頼して終わりではなく、地域協働活動の一環として、ポスター制作過程も含めて生徒たちに経験させたいと思い、校内でも取り組みました。ポスターに映っている本校の生徒たちには、ポスターの企画趣旨や肖像権についても説明して了承を取っています。
――やはり公立高校で、こうした斬新なポスターは珍しいのでしょうか?
私は奄美高等学校に赴任して5年目、広報係としては4年目になりますが、全国的に見ても、広報活動に力を入れている公立高校はまだまだ少ないと思います。学校教員の仕事は多岐にわたり、クラス運営や授業の準備、部活動の指導などとも並行して、多くの仕事を限られた時間でやらなければならず、なかなか広報活動の時間まで取るのは難しいというのが本音かもしれません。
しかし、これからの時代は、少子化で子どもの数は減っていきます。県中心部の学校はまだ良いかもしれませんが、地方校は手を打たなければなりません。奄美高校は専門高校ということもあり、その特色を活かした広報活動を通して、近隣校や県内の高校にも良い影響が与えられたらと思い、毎年、趣向を凝らしてきました。教育現場というところは発信力が不足していると感じている中で、私自身、発信することの大切さについてお話しされていたマーケターの森岡毅さんの言葉が心に響き、何をどう伝えるかを意識して取り組んでいます。
いろいろな背景はありますが、今回のポスター制作にもさまざまな「今」の時代に即した広報戦略を取り入れ、高等学校の新しいスタイルを入れて挑戦しました。ポスターデザインをもとにしたプロモーション動画もアップしています。HPやブログ・Instagramでの発信や各種広報物にも力も入れており、今年は学校案内パンフレットや広報誌「あまこう通信」のデザインを刷新したり、卒業生の方にスポットを当てるコーナーを充実させたりと、手に取って読んでみたいと感じてもらえるように工夫しました。
まずは島内の生徒募集が本校のミッションですが、奄美大島の人口を増やすためにも、Iターン誘致や地域の活性化といった長期的な視点も見据えて、前向きに活動していきたいと考えています。2021年7月の世界自然遺産登録を機に、奄美大島としても大きな転換期を迎えていると思います。全国各地の主要空港から奄美空港まではLCC含めて直行便が多く出ていますし、先日、タレントのIMARUさんが奄美大島との二拠点生活を始められるというニュースも拝見してうれしく思っています。奄美大島の魅力をもっともっと広めていけるように、これからも奄美高校から発信していきたいです。
◆MITSUI RYUTA/エビス製作室(Instagram@ebisseisakushitsu)
1980年 奄美大島生まれ。
幼少期に、奄美大島に現れる自然光(散乱・反射光含)や環境音などに多大な感覚的影響を受ける。幼少期から絵を描き続けていたが、2004年頃、グラフィックデザイン、写真、映像を表現に取り入れ奄美大島を中心に活動を始める。
動的な紙面。湿度や匂いを帯びた映像。認知→知覚へ表現などに作家青春をかける。
◆尚味(なおみ)(Instagram@naomi_illust_work)
大阪府出身。2014年に夫の故郷である、東洋のガラパゴス・奄美大島へ移住。
夫婦でオープンさせたアウトドアショップ「GUNACRIB」を拠点に制作活動。現在は2児の母。
独特の世界観、オリジナリティがあり、親しみやすいデザインで人気。キリンビール世界自然遺産限定缶のデザインや雑誌の挿絵など多方面で活躍中。
(取材・文=ししまる555)