女優の武田梨奈がパーソナリティーを務めるラジオ番組『武田梨奈のこだわりな時間』(ラジオ関西)8月20日放送回に、空手東京五輪代表の植草歩選手がゲスト出演。子どもの頃から空手を続ける武田にとって、冠番組で念願だった空手現役トップ選手とのトークが実現した。そのなかで、武田が植草選手の空手を始めたきっかけや、空手をやってよかった思いなどに迫った。
【武田】 植草さんはすごく強いし、⾒た⽬もかわいらしいので、空⼿の道場でもとても注⽬されていたんじゃないですか?
【植草】 いえ、道場や学校、部活などではまったくそういう扱いは受けてこなかったです。ちょっとテレビに出始めたとき、「かわいい!」みたいな感じで売り出されたので、はがゆいというか、恥ずかしくて……。部活に帰ってきたときに、男子から「おまえかわいいって言われてるぞ」みたいにいじられるというか……。
【武田】 空⼿では男⼥の垣根がなくなった感じがありますよね。
【植草】 ありますね。でも、空手では、男女の仲がいいというのは、すごくいい部分だなと思います。オリンピックのとき、他競技の人と一緒になって、テレビや練習などでお会いしたときや、取材に来てくれるメディアの方からも、「空手って、男女めっちゃ仲がいいよね」「距離感が近いから仲が良くてうらやましい」と言われるんです。空手は男女一緒に練習もしますし、練習内容も一緒で、やっぱり距離感が近かったり、常にともにしていたりするので、同じ苦楽をともにすると仲良くはなりますよね。
【武田】 空⼿を始めたきっかけは何でしたか?
【植草】 「道場に一緒に行こうよ」と幼なじみに誘われて、ミット打ちをさせてもらったとき、「パーン!」というはじける音に、「気持ちいい! 楽しい!」と子どもながらに一気にひかれてしまって。それまで水泳やピアノなどいろいろ子どもながらにやっていたのですが何も楽しいと思わなくて、心がパッとひかれるものがなかったのですが、空手にはひかれたんです。父にすぐ、「これやりたい!」と言ったのですが、父は当初、続かないと思っていたよう。道着やミットなどを揃えるのにすごくお金がかかりますし。それでも、「本気でやりたいのか」と言われて、「本気でやりたい!」と言って始めました。ただ、最初はずっと基本や、型、正座の仕方、立ち振る舞い、「グー」の握り方、こぶしの回し方など、そういうものばかりで、「あのときやったミット打ちはいつできるの……」みたいな思いもありました。
【武田】 確かに「⼿⼑」や「受け」なども含めて、地道で地味な稽古が多いですもんね。私はそれが1時間⽬にずっとあったので、⼦どものときは2時間⽬の組⼿がすごく楽しみで、好きになりました。⼀⽅で、⼤⼈になって「空⼿をやっていてよかったな」と思うことはありますか?
【植草】 やっぱり礼儀作法ですね。立ち振る舞いもそうですが、座っているとき、挨拶、敬語、いろんな部分で礼儀作法を空手で習っていたことが、大人になって、空手以外の部分でも役立っているのは、本当によかったなと思います。
【武田】 もしご⾃⾝にいつかお⼦さんができたときには、空⼿を習わせたいと思いますか?
【植草】 うーん……どうかな。やりたいと言うなら、やらせたいですが。でも、植草の子どもと言われたり、二世として扱われるじゃないですか。自分のとき、それはなくて、何もなかったからこそ這い上がっていけたのですが、(子どもは)よくも悪くも言われそうなのかなと。自分のせいで苦しませてしまうんじゃないかなと思うので、だったらほかの競技をやらせたいな、みたいな思いはあります。
【武田】 プレッシャーを感じますよね。
【植草】 勝てなかったらきっとなんか言われちゃうし、勝っても植草の子だからと言われるのもいやだし、どっちに転んでも、自分はマイナスのことを考えてしまうから。そういうこともあって(空手は)本人がやりたいならと。自分が子ども時代、あまり意見を言えなかったり、相談できなかったほうなので、きっと自分の子もそうなんだろうなと思っちゃうから。思っていることをきちっと言える環境にいかせたいと思いますね。
【武田】 ご⾃⾝が空⼿をやっていて、なにか感じてきたことはありますか?
【植草】 女の子なのに「ゴツい」「でかい」「こわい」みたいなことを、中学時代、高校時代でけっこう言われていました。特に中学生のときはそれで女性扱いされなかったというか、男子からいじられていたこともあって、かわいい洋服を着るのも恥ずかしい、みたいな。「え、なんでおまえがピンクなんか着るの?」と。高校のときも、クラスでも女の子のなかで身体が大きいし背も高かったので、男子から「でかいな」「足太いな」と言われるのも、彼らはほめ言葉と思っていたり別に何ともないことだと思っていると思うのですが、自分のなかではちょっと乙女だから恥ずかしいみたいな思いがありました。大学にあがってからは男の子もみんな大人になっていくので、足が太いこと、身体が大きいこと、空手が強いことに対してリスペクトもある言葉を、大人になればなるほどかけていただけるようになって。自分も、競技で強いこともそうだし、身体がでかいこと、トレーニングして大きくなってしまうこと、そういうのも誇りに思えるようになってきましたね。
【武田】 ⼥の⼦で学⽣時代に空⼿を習っている⼈は、同じような感情を抱いているかもしれないですね。
【植草】 そうなんですよね。空手というだけで「こわい」「でかい」など、いろんなイメージがあって。子どもだからデリカシーがなかったりして、そんなつもりはあっち(言っている方)もないんでしょうけど。そこ(空手で鍛えていること)に自分自身も誇りを持てなかったというか。でも、いまは日本もトレーニングが盛んな雰囲気があったり、SNSなどで筋肉美を出す方も多くなって、情報社会になったというのもあり、自分も、足が太いことや筋トレして(鍛えて)いることなどにも誇りを持って、「これが私の美しさだ」みたいに思えるようになってきました。人それぞれ、何かしらの個性があっていいと思うんです。武田さんの美しさもあるし、きっと武田さんにはないものも自分にはあるし、自分にないものが武田さんにはあったり。そういうふうに今は思えるから。協調性も大事ですが、協調性のなかに自分の個性もあったほうが、みんなが幸せになるんじゃないかなと思いますね。
※トーク後の感想
【武田】 植草さんとは「はじめまして」でしたが、実はTwitterをお互いフォローしあっていました。先ほどご挨拶させていただいたときに、「今まで空⼿がなかなかメディアで取り上げてもらえることが少なかったから、武⽥さんが出ていることがすごくうれしかったです」と⾔ってくださって、本当に私もうれしかったですし、いまオリンピックや数々の⼤会で空⼿の魅⼒をどんどん世界中に広めている植草さんを⾒て、それぞれ別の場所ではありますが、こうした活動を通じて皆さんに空⼿のことを知っていただけたらと思っています。来週(8⽉27⽇放送回)も植草選⼿と空⼿の魅⼒をたくさん伝えていきたいと思います。みなさん、どうぞお楽しみに!
『武田梨奈のこだわりな時間』
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