昭和庶民の生活基盤『レコード』は「音楽だけ」を聴くものだけではなかった 演芸から観光、広告まで存在 | ラジトピ ラジオ関西トピックス

昭和庶民の生活基盤『レコード』は「音楽だけ」を聴くものだけではなかった 演芸から観光、広告まで存在

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 レコードは、音楽だけを聴くものではない。CDと違い、それだけ多様性のある媒体だったのである。そこには、テレビやビデオが無い時代ならではの音源があふれているのだ。

 戦前のSP盤時代から、音楽以外に多種多様なレコードが存在する。例えば、落語や漫才、講談、漫談、浪曲などの演芸物。映画説明(活弁)や演劇、児童劇、ドラマなどの芝居物。その他、講演や朗読、観光案内、ドキュメント、教材など。珍しい物では、広告レコードまである。例えば、著者は、音楽以外にも変なレコードを色々と収集しているのだが、そんな中に、溝を刻んだ薄いシェラックが張り付けられた紙製のレコードがある。再生すると、個人商店の店主による宣伝文句が流れてくるのだ。声の広告である。

戦前の紙製広告レコード(筆者提供)

 戦後も、これら音楽以外のレコードは、バラエティ豊かになっていく。更には、「エロ」というジャンルも加わってくる。アダルト・ビデオが登場するまで、世の男性が自宅で楽しむツールが“ピンク・レコード”だったのだ。これに関しては、また稿を改めて。

 戦後のドキュメント・レコードは、世間の出来事や報道の記録といった側面もあった。東京オリンピックの実況や三島事件での三島由紀夫の演説から、長嶋茂雄や千代の富士といった人物の伝記まで、個人がテレビや映画を録画できなかった時代、レコードによってその興奮や感動を“音”で再体験していたのだ。その他、汽車や旅客機、戦闘機や戦車といった乗り物、お寺や教会の鐘など、マニア向けな音レコードも発売されていた。ちなみに、著者が所有するものでは、例えば「宇宙人の声」と称するEP盤や、冷蔵庫の取り扱い説明が録音されたソノシートなどの、珍レコードがある。

 記録と言えば、旅の記録もある。昭和30~50年代にかけて、観光地では絵葉書レコードが売られていた。名所の絵葉書にレコードの溝が張り付けられていて、実際に投函もできるのだ。針を落とすと、その名所の観光案内がBGMと共にナレーションで流れて来る。余談だが、鹿児島の案内では、鹿児島弁でナレーションが収録されており何を言っているのかよくわからないが、ある意味、旅情を感じる。

各地の絵葉書レコード(筆者提供)
ポートピア’81記念に発売された、神戸の円形絵葉書レコード(筆者提供)

 こうやって音楽以外のレコードを見てみると、昭和の時代、いかにレコードが庶民の生活に密着していたかがよくわかる。

(文=ラジオディレクター・佐々木孝昌)

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