バニーは妹の夫ビーバンのクルマを盗み、トーニャを救い出し、2人で子どもたちが住む町へ向かいます。
町へ着いた2人は家庭支援局へ行き子どもたちとの面会を求めますが、偽装を悟られて警察が動き出し、バニーたちは立てこもり事件を起こしてしまいます……。
ニュージーランド在住の中国人映画監督ゲイソン・サヴァットが手がけた作品です。家も仕事もお金もないシングルマザーで逆境に立ち向かうバニーに扮するのは、オーストラリアのアカデミー賞助演女優賞を受賞したベテラン女優エシー・デイヴィス。バニーの姪で家族関係に悩む高校生トーニャをニュージーランド生まれの若手トーマシン・マッケンジーが演じます。
ニュージーランドで住宅不足が深刻なことが今作の背景です。日本のアパートのような集合住宅がニュージーランドには少なく、賃貸住宅は「フラット」という形式の戸建てに間借りして住むのが一般的だということです。ニュージーランドの家には寝室が3~4つあるのが普通で、家を買ったら空き部屋をフラットとして貸し出して家賃収入をローンの返済にあてるそうです。映画の舞台となったオークランドでの戸建ての価格は平均1億2000万円もするため入手は簡単ではありません。
また、この国の若者事情が姪のトーニャに投影されています。ユニセフによるとニュージーランドの若者の幸福度は先進38か国中最下位。15歳〜19歳の自殺率は38か国で2番目に高く、日本のおよそ2倍です。若者がこうして苦悩する理由は、家庭の貧困や経済的格差を生む教育制度にあるようです。
この映画は、現代社会の歪みにはじき出された生活弱者が家族一緒の普通の暮らしを送りたいだけなのに実現できない厳しさを、ユーモアを込めて明るく温かく描いています。
感情の起伏が激しく破天荒な主人公が家族のために力強く生きようとするロードムービーであり、経済格差が広がる仕組みに疑問を投げかけるヒューマンドラマに仕上がっています。映画『ドライビング・バニー』は、9月30日(金)ロードショー。シネ・リーブル神戸では10月7日(金)公開です。(SJ)
◇映画『ドライビング・バニー』(原題:原題:The Justice of Bunny King)
※上映日程は、作品の公式サイト・劇場情報でご確認ください。
出演:
エシー・デイヴィス トーマシン・マッケンジー エロール・シャン トニ・ポッター ザナ・タン
監督:ゲイソン・サヴァット
配給:アルバトロス・フィルム
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