「クラフトコーラ」がブームになっている。4、5年前から全国各地でクラフトコーラが作られ始め、ジワジワと流行の兆しが見えてきたところに、今春、人気テレビ番組で特集されて一気に火がついたそうだ。
そもそもコーラという飲料は、1800年代後半にアメリカの薬剤師が滋養強壮の目的でカフェインを含有するコーラ・ナッツ(アフリカ原産の植物)の種子を砕いたものに数種のスパイスを混ぜて作ったものが起源。クラフトコーラとは、大手飲料会社の商品と区別して「職人が作るコーラ」「手作りのコーラ」を表現した呼び名で、明確に定義があるものではない。レシピも作り手によって違うが、基本的にコーラ・ナッツとスパイスをシロップ状に煮詰めて炭酸で割るものが多く、これに地元の特産品、例えば金柑や柚子をプラスするなど、それぞれの特色を出した「地コーラ」も人気だという。
播磨地域では、姫路市林田町の酒蔵「ヤヱガキ酒造」が開発し2021年8月に発売した「ラララコーラ」(300ミリリットル、1,500円)がある。酒蔵がクラフトコーラを製造するのは兵庫県内では初めてで、酒蔵らしく原材料に米発酵エキスを使用していることが特長だ。
日本酒を作るのに欠かせない米麹を麹菌や微生物の作用で発酵、熟成させて抽出した米発酵エキスを使用することで自然な甘みやコクが生まれ、糖分量を抑えることに成功。これに、コーラ・ナッツをはじめ、シナモンやカルダモン、ナツメグ、生姜など厳選した7種類のスパイスを加えて仕上げている。しかも、これらのスパイスは、自社で丁寧にすり潰すことにもこだわったという。
当初は月産300本程度だったが、この丁寧さが評価され、売り切れが頻発するようになったため、現在は倍以上の700〜800本に増産中。スーパーやホームセンターからの引き合いも強いが、手作りのため応えられていないのが実情だ。
同社事業開発課の谷口奈津子チーフは、「ラララコーラは、健康志向から来るノンアルコール飲料の需要の高まりも開発のきっかけ。コロナ禍で酒類業界が大きな打撃を受ける中、何か私たちらしい提案ができないかと試行を重ねた。ぜひ飲んでいただき、おもしろい酒蔵があるなと知ってもらえたら」と話す。販売チャネルはJR姫路駅1階の直営店(ピオレお土産館)、自社のオンラインストア、本社窓口の3経路しかなく、まだまだ消費者にしっかりと届けられる状態ではないが、「このチャレンジを私たちの日本酒の知名度アップにつなげていきたい」と前を見据える。
(取材・文=播磨時報社)