兵庫県立美術館の学芸員が今こそ紹介したいという「注目作家」を紹介するプログラム「チャンネル」。第13回は、神戸市にアトリエを構える画家・吉村宗浩を紹介する。
神戸市出身の画家・吉村宗浩は15歳で絵を描き始め、29歳で美大を卒業し、現在61歳。「描いても人に伝わらない苦しい時代」を経て、50歳を過ぎた頃から広く注目をされるようになった。
壁一面に並んでいるのは、オーソドックスで古典的な肖像画や風景画。流行や新しさはない。しかしどこか現実離れした光景が広がり、独特の魅力を放つ。追求された美がある。
「絶対美が大事なんです」と吉村は話す。絶対美とは、「根底に隠されている何か。品格とか…これがないと弱々しく独りよがりの作品になってしまう。この絶対美と絵の内容が両輪とならないと作品は成立しない。この歳になってようやく人に伝わるものが描けるようになってきた」という。
会場には2006年ごろの作品から初めての美術館での個展の為に用意した新作など90点余りが並ぶ。不気味でどこかユーモラスな世界観。どの作品も何かを語りかけているようで、見ればみるほどその世界に引き込まれていく。
会期中は会場がアトリエに変身し、吉村本人がほとんどの時間、絵画制作を行う予定で、「画家に会える(かもしれない)」展覧会となる。制作が進むと、展示の様子が変わる可能性も。とはいえ吉村は「お客さんと話していることも多く、なかなか筆を持つ時間がない」と笑う。また、会場には吉村本人がセレクトしたBGMが流れる。クラシックからロックまで幅広く、音楽によって空間の空気も違うように感じられる。
兵庫県立美術館 注目作家紹介プログラム-チャンネル13-
「吉村宗浩 画家とアトリエ-メチエの修行場-」
2022年10月8日(土)〜11月6日(日)
休館日 月曜日
兵庫県立美術館 ギャラリー棟1階 アトリエ1
観覧料 無料