神戸の六甲山では、11月23日まで「六甲ミーツ・アート 芸術散歩2022」が開催されている。会場は「六甲ガーデンテラス」、同施設内の「自然体感展望台 六甲枝垂れ」や、「ROKKO森の音ミュージアム」(旧、六甲オルゴールミュージアム)など、六甲山上の10か所のエリア。芸術を楽しみつつススキが揺れる晩秋の六甲山をゆったりと“散歩”できる空間が広がっている。
1995(平成7)年の阪神・淡路大震災の影響でそれまでのにぎわいが失われていた六甲山に再び人の流れを呼び戻そうと、2010年から開催されている「六甲ミーツ・アート」。現代アートの魅力とともにレジャーや観光でも見どころの多い六甲山のPRを目指す役割も担っている。
会場の1つ、六甲ガーデンテラスは、800メートル近い標高を誇る六甲山の山上でも有数の眺めのいいエリアにあり、同イベントではアートと絶景のコラボが楽しめる会場になっている。
その六甲ガーデンテラスで展示されているのが、神戸市長賞を受賞したアーティスト・淀川テクニックさんの作品「六甲山ムツコ グリボウ グリグリボウ」。ナイフやフォーク、スキー板など六甲山で集めた廃材を使ってイノシシの親子を表現したアート作品だ。アーティスト自身が神戸に滞在し、イノシシが街に現れる様子に驚いた経験からインスピレーションを得ているという。
また同じく市長賞のアーティストユニット・kammy+OK!の作品「六甲山の乳搾り」は、体の一部が牛乳パックになった牛。神戸の食文化を豊かにしている酪農や家畜の命など、食育のメッセージも込められている。
「六甲ミーツ・アート芸術散歩2022 公募大賞」グランプリの作品は、六甲有馬ロープウェーの六甲山頂駅に展示されている、アーティスト二ノ宮久里那さんの作品「Transience」。休止線のホームを覆うように広がる同作品は、使われなくなった毛糸や麻糸、または録音用のテープなども使用し、あらゆる素材が編み込まれている。作品は10年以上制作が続き、会期中の現在も進行中だ。
「現代アートの楽しみ方のひとつは、あっと驚くような作品との出会いや、考えさせられるもの、普段とは異なる視点でものを見る楽しさにあると感じる」と話すのは、六甲山観光の広報担当・河野有紀さん。
また、神戸市文化スポーツ局文化交流課の猿荻勝太さんは「はじめて見る方でも楽しめる作品が多数ある。現代アートを通じて六甲山の魅力を再発見していただきたい」と語る。
「六甲山ミーツ・アート 芸術散歩2022」総合ディレクターの高見澤清隆さんは「本展がアートと六甲山のコラボレーションを通してさまざまな出会いの場になることを願う」と、同イベントへの来場を呼びかけていた。
※ラジオ関西『サンデー神戸』2022年10月23日放送回より