女子サッカーのプロリーグ「WEリーグ」の2年目となるシーズンがスタートしたなか、その開幕戦で勝利した初代女王・INAC神戸レオネッサの攻撃的なサッカーを、元Jリーガーが絶賛しながら解説した。
ラジオ番組『カンピオーネ！レオネッサ!!』（ラジオ関西）10月24日放送回では、「2022-23 Yogibo WEリーグ」第1節、INAC神戸が2-0で勝利した対大宮アルディージャVENTUS戦をプレイバック。
この試合について、リスナー・サポーターからは、「カップ戦やトレーニングマッチで見られた良い部分が出て、勝利に結びついたように感じました」、「田中美南選手はすごいですね！ ゴールもポジショニングもバッチリでした。チームの連覇の手応えを得ました！」、「試合では最終ラインへのプレスが効いており、前シーズンから1.5倍増しの攻撃だと思います」など、おおむね好意的な評価が番組に寄せられていた。
そのなかで、ヴィッセル神戸などで活躍した元Jリーガーで、番組パーソナリティーを務める近藤岳登は、新生INAC神戸の攻撃が昨シーズンから変化しているという。
この一戦で近藤が注目したのは、特に前半に多く見られた攻撃の形だ。ゴールは前半に左サイドから、後半に右サイドから、それぞれ精度の高いクロスをきっかけに生まれたもの。朴監督の押し進めるサイド攻撃の特長がいきたが、ただサイドがよかったわけではないと、自身の経験を踏まえながら、次のように力説する。
「ペナルティーエリア付近の真ん中からのワンタッチの攻撃をはじめ、ダイレクトプレーも含めて、一番相手が怖いところへパスを通すというプレーが、ものすごく増えた。真ん中からそれをされると、ゴールに直結するから、相手は真ん中を閉めざるを得ない。そうすると、サイドが空き、サイドに開くと例えば（右サイドの）守屋都弥選手がワンタッチで前を向き的確なクロスをあげてくる。そこを見ようとすると、今度はまた中を突く。この（中央とサイドをうまく使う）アクセントが、俺はすごいなと思った。特に、FW田中美南選手への足元のパスをものすごく入れていた。これは、相手がめっちゃ嫌だろうなと。俺もサイドバックをやっていたから、『これ、めちゃくちゃ（中に）絞らなアカンやつや！』と、そう思いながら見ていた。サイドからのクロスで生まれた得点シーンは完璧なシナリオで、サイド攻撃は素晴らしかったが、それ以上に真ん中への圧がすごかった」
そして、中への攻撃が成立したのは、田中選手の存在が大きいことも、近藤は付け加える。
「田中選手は入ってきたボールを全部、ほぼパーフェクトにコントロールして、全部ゴールに直結させようとプレーする。ヴィッセル神戸FW大迫勇也選手に似ている感じもあり、1タッチ目が『次シュート打ちますよ』『ゴール狙いますよ』という体の向きとコントロールをする。INAC神戸の選手たちも、そこにバンバンとパスをつけるし、そうすると田中選手もシュートを打つから、相手からすると『おい、もう真ん中を閉めなきゃいけねーじゃん』となってしまう」
縦パスが効果的に使われていることについて、田中選手も23日の試合後、次のようにコメントし、チームメイトに要求していることを明かしている。
「自分のアクションは見てと要求はしています。（脇阪）麗奈だけでなく、中盤の選手も、今日でいえば開幕戦で固かった部分もあったと思いますが、もっと前を向けるシーンもあるし、前につけられるシーンもあるし、そこは全然ネガティブじゃなく、次の試合にいかしたいし。いかしていってほしい」（田中選手）
また、朴監督も、26日のメディア公開練習後の囲み取材で、中央を意識した攻撃について、「基本的にはチームの共通の絵としては、中央（の攻撃の形）というのは非常に大事にしている」と述べている。
番組の中ではさらに、両サイドの守屋選手や水野蕗奈選手のクロスの精度の向上や、MF伊藤美紀選手や脇阪麗奈選手、DF土光真代選手や竹重杏歌理選手の機を見た攻撃参加、果敢な攻め上がりも称えた、近藤。「抜群の細かい技術と、何回も何回も真ん中をついて、真ん中が怖いって思わせたINACの攻撃パターン。これはカンジョ監督がたぶん相当やっている形。それが生んだサイドからの2得点だったと思うし、俺はそれにすごく感動した」と、リーグデビュー戦でいきなり攻撃の進化を見せた新指揮官のサッカーに衝撃を受けていた。
