【相原弁護士】 長時間労働によって脳梗塞や心停止などの脳・心臓疾患を発症する場合や、精神障害による自殺が原因ということもあります。
現在の労働行政では、長時間労働の基準となる“過労死ライン”は1か月80時間(月に20日出勤とすると、1日4時間以上の残業=12時間労働)とされています。 これは、健康障害の発症前2~6か月の間で平均80時間を超える時間外労働をしている場合、健康障害と長時間労働の因果関係を認めやすいという目安になります。つまり、これ以上働いている方は、働きすぎている可能性があります。
――過労死を未然に防ぐためにはどうしたら良いでしょうか。
【相原弁護士】 先ほどもお伝えした通り、働いている本人は働きすぎているという自覚がない方も多いです。まずは、自分がどれだけ働いているのかを把握するためにも数字にしてみてください。過労死ラインを越える、またはそれに近い長時間労働をしている方は、労働時間を見直す必要があります。改善されない場合などは、過労死という最悪の事態を防ぐためにも弁護士に相談していただければと思います。
――相原弁護士は、過労死防止に関する啓発活動に取り組んでいるとのことですが、どのような活動を行っているのですか。
【相原弁護士】 過労死を防ぐためには“意識を変えること”が大切なので、弁護士として、学校(中学校、高校、大学)での過労死防止啓発授業や、過労死シンポジウムの実施、労働問題に関するパンフレットの作成・配布などを行ない、意識の改革に取り組んでいます。
11月は「過労死等防止啓発月間」なので、各都道府県において「過労死等防止対策推進シンポジウム」を行うほか、「過重労働解消キャンペーン」などの取り組みを行います。この機会に、ご自身やご家族の労働時間、労働環境を改めて見直していただきたいです。
◆相原健吾(あいはらけんご)弁護士 神戸合同法律事務所(神戸市中央区)
関西学院大学司法研究科を卒業後、2019年に弁護士登録し、兵庫県弁護士会に入会。兵庫県弁護士会・労働と生活に関する委員会の副委員長として、学校への過労死防止啓発授業や、過労死シンポジウムの実施など、労働事件や過労死防止に関する啓発活動を積極的に行う。