【中将】 アニメ系の盆踊りソングは一応、音頭の体裁をとっていますが、音楽的にまったく音頭じゃないのになぜか盆踊りソングになっている曲もあります。たとえば荻野目洋子さんの「ダンシング・ヒーロー」(1985)。
【橋本】 これだけ聴いたら、なんで盆踊りで受け入れられるのかまったくわからないです……。
【中将】 洋楽のダンスナンバーのカバーですからね(笑)。ところがこの曲は1980年代後半から愛知県や岐阜県で延々と盆踊りソングとして使われていたそうなんです。僕と菜津美ちゃんの共通の友人で、柴台弘毅(しばだい・こうき)君という社会学者が、「日本のポピュラー音楽におけるスタンダード生成過程の類型化」という論文の中でそのあたり詳しく解説してるんですが、やはり盆踊りってきわめてローカルなものなので、地域の一部の人が根強く支持すればそれが文化になって残っていくんですね。
【橋本】 荻野目さんご本人もびっくりでしょうね!
【中将】 今ではご本人もこの曲を歌うときのパフォーマンスに盆踊り要素を取り入れているようですね。「ダンシングヒーロー」は大阪府立登美丘高等学校ダンス部の「バブリーダンス」に使われたときも話題になりましたし、つくづく息の長い曲だと思います。
さて、最後にご紹介する盆踊りソングは僕が今後、再評価されてほしいと思っている曲です。酒井法子さんで「のりピー音頭」(1988)!
【橋本】 のりピー! 復活してほしい!
【中将】 この曲はのりピーさんが全盛期だった1988年にカセットテープ限定で発売された盆踊りソングなんですが、B面も「のりピー語講座~盆踊り篇~」という香ばしいナンバーです。
【橋本】 の、のりピー語とは!?
【中将】 「マンモスうれぴー」とか、のりピーさん独特の言葉遣いですね(笑)。小倉優子さんも昔、「〇〇りんこ」みたいな言葉遣いしてましたが、ああいう文化の原点だったのかもしれません。
【橋本】 なるほど……女優業がメインになってからテレビで見ていた世代なので、アイドル的な要素については全然知りませんでした!
【中将】 ぶりっ子路線まっしぐらな方でしたが、事件もあってイメージは激変しましたね……。ともあれ、昭和って一流アイドルも盆踊りソングを歌う時代だったわけです。平成に入って1990年代以降はそういう文化が廃れてしまいましたが、盆踊りは日本の文化に欠かせないもの。そろそろ新しい盆踊りソングのヒットが生まれてもおかしくないですね。
(※ラジオ関西『中将タカノリ・橋本菜津美の昭和卍パラダイス』2022年11月8日放送回より)