塩野義製薬は24日、開発中の新型コロナウイルス感染症向けのワクチンについて、厚生労働省に製造販売の承認を申請した。 承認されれば、国内の製薬会社による初の国産ワクチンとなる。
塩野義では22日に、開発していた新型コロナ対応経口薬(飲み薬)「ゾコーバ」が緊急承認されている。
商品名は「コブゴーズ」。国内の製薬会社が開発したコロナワクチンの承認申請は初めて。遺伝子組換えタンパクワクチンで、20歳以上の1、2回目接種と、3回目の追加接種用として、特例や緊急ではなく、通常の枠組みでの承認申請となった。
塩野義はすでにインフルエンザなど複数のワクチンで実用化されている技術を使い、最終的にインフルエンザとの混合など呼吸器ワクチンとして定期的に打つことができるワクチンを目指す。
2020年に臨床試験(治験)がスタートし、2022年3月末までの申請を目指していたが、治験の遅れや量産体制の確立に苦心し、申請時期を遅らせていた。その後2022年10月、イギリス・アストラゼネカ社のワクチンと比較して、ウイルスの働きを抑える「中和抗体」の値が高いとする結果が得られたという。
24日午後、東京都内で会見(オンラインでも配信)した塩野義の手代木功社長は、 パンデミック(感染症の爆発的流行)からの学びとして「新型コロナ感染拡大により、感染症に対する世の中の意識が確実に向上した一方、新たな感染症の流行に対する危機管理体制の整備はまだできていない。”あしたの感染症と闘う”姿勢を取るべき」と述べた。
また新型コロナウイルスだけでなく、世界には多くの警戒すべき感染症が存在していることを前提に、「感染症は、いつ・どこで・何がパンデミックを引き起こすのか予測困難だ」と指摘。
そして、「世界中の人々が往来するグローバル社会では、各国ごとの感染症対策だけでは不十分で、誰もが感染・発症し、死に至る可能性 があることを再認識すべきだ」と警鐘を鳴らした。
このほか日本でワクチン開発が遅れた背景として、国家安全保障の観点での技術開発に対する継続的な支援や、 大規模臨床試験を実施する枠組みの不足を挙げた。