今から300年以上前、元禄の頃から「塩の国」として知られる兵庫県の播州赤穂。『忠臣蔵』で有名な赤穂藩の三代目城主・浅野内匠頭長矩(あさのたくみのかみながのり)は風流をこよなく愛し、茶の湯に精通した人物でした。そんな浅野内匠頭の指示により、赤穂の塩を使ったお菓子として作られたのが「塩味(しおみ)饅頭」です。
2013年には、総本家かん川(以下、かん川)の『しほみ饅頭』が、兵庫県内各地の特色ある商品を選定して全国に発信する「五つ星ひょうご」に認定されました。その特徴を、寒川尚樹社長に聞きました。
原材料は、砂糖・小豆・寒梅粉(かんばいこ)・水あめ・和三盆糖・塩。まんじゅうの外側の落雁生地には、細かく挽いた砂糖と餅を白焼きして粉にした「寒梅粉」と、かん川独自の素材として、希少な純国産の和三盆糖を使用しています。また、中のあんこは、通常のこし餡よりもさらに固めに練り上げて作る「火取り餡」に近いものを使っています。
原材料がシンプルなので、味や食感にダイレクトに影響します。手間を惜しまず、それぞれの素材をていねいに吟味・加工することにこだわっているのだそう。そして、『しほみ饅頭』に欠かすことのできないのが、地元“赤穂の塩”。乾燥した塩ではなく、しっとりと水分を含んだ塩を使っています。これによって、このまんじゅうならではのまろやかな味わいがうまれるのです。
歴史が深い『しほみ饅頭』ですが、時代とともに進化もしています。「落雁生地が苦手……」という声を受けて数年前に誕生したのが『生しほみ』。国産の餅米を使った柔らかくてもちもちした羽二重餅(はぶたえもち)の生地で餡を包むことにより、これまでとは違った食感を楽しめます。和菓子は煎茶や抹茶と合わせるイメージがありますが、「『生しほみ』は紅茶に合わせるとおいしい」との声が寄せられているそう。あわせる飲み物によって、和菓子の楽しみ方も広がりそうですね。
(取材・文=岡本莉奈)
【総本家かん川】
◆播州銘菓 しほみ饅頭 6個入り840円(税込)
◆播州銘菓 生しほみ 6個入り1,110円(税込)