終戦から8年が経ち、山本に妻から葉書が届きました。
“あなたの帰りを待っています”と書かれています。山本は帰国できることを祈りますが、体調を崩していました。ソ連側は山本の症状を中耳炎と診断するのですが、山本は日に日に衰えていきます。ラーゲリの仲間たちは山本を病院に連れて行って欲しい、と決死の覚悟でストライキを始めます。
山本は余命3か月、と分かりました。それでも山本は妻との再会を決してあきらめません。仲間たちは、山本に遺書を書くよう進言します。
「こんな所でくたばるわけにはいかない。妻と約束したんですよ、必ず帰る、って」
山本は病床の震える手で、家族に宛てた遺書を書き上げます。仲間たちは遺書を預かり、帰国できたときに家族へ渡すことを誓います。ところが、ラーゲリ内では文字を残すことがスパイ行為とみなされ、山本の遺書はソ連側に没収されてしまいます……。
原作は、講談社ノンフィクション賞・大宅壮一ノンフィクション賞を受賞した辺見じゅんの「収容所(ラーゲリ)から来た遺書」で、映画化を機にノベライズされています。
『64-ロクヨン-』や『糸』などで知られる瀬々敬久が監督を務めました。
戦後の「シベリア抑留」での強制労働は、衛生環境や食料事情が悪く、体中にノミやシラミが湧いたり赤痢やコレラが発生したりしておよそ6万人が命を落としたとされます。
こうしたなか、太陽のような存在として仲間たちから慕われたのが今作の主人公・山本で、二宮和也が扮しています。また山本の妻・モジミは北川景子が演じます。
極限のラーゲリを生き抜く仲間は、戦禍で友人を亡くしたトラウマを抱える松田が松坂桃李、ムードメーカーで心優しい新谷は中島健人、帝国軍人として山本に厳しくあたる相沢は桐谷健太、山本と同郷の先輩・原が安田顕です。
今作の撮影が始まったのは2021年10月下旬で、初日は、ソ連兵の監視のもと重労働をさせられるシーンでした。二宮は役のために大幅な減量をしていて、25歳の頃と体重が同じになったそうです。一方で本人は「13年分の重力の影響は戻らないと知りました(笑)」と言って周囲を和ませたということです。
人生で初めて丸刈りにした中島は、役で丸刈りにすることが一つの目標だった、と明かしています。それを「二宮くんの主演作品でできたことがとてもうれしいです」と二宮へのリスペクトを語っています。
主題歌はMrs. GREEN APPLEの「Soranji」です。ラーゲリ内で飼われていた黒毛の犬・クロも重要なキャラクターで、涙を誘います。『ラーゲリより愛を込めて』は、12月9日(金)公開です。(SJ)