自衛隊演習場内で農業を続ける理由 「平和への思いと日頃の暮らしがそのままつながった生き方」を追う | ラジトピ ラジオ関西トピックス

自衛隊演習場内で農業を続ける理由 「平和への思いと日頃の暮らしがそのままつながった生き方」を追う

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 数年前からヒデさんの長男・大一さんが手伝いへ来るようになりました。大一さんは、演習場の中の耕作地を絶対に自衛隊から取られてはいけない、と考えています。「日本原から自衛隊を撤退させて牛の放牧場にせんといけん」という祖父の言葉が心に残っています。

 大一さんが子どもの頃は、演習場の柵や錠もなく出入りが完全に自由だったそうです。

 自衛隊とアメリカ軍の共同訓練が日本原で行われる日、演習場が封鎖されます。大一さんは演習場で草刈りをしようと内藤家の土地へ向かいます。いつもの鍵で入ろうとすると自衛隊員たちが慌てて「ダメです。ダメです」と止めました。ゲートには“射撃中立入禁止”と書かれた張り紙があります。大一さんは「どういうことなのか」と隊員たちに詰め寄ります……。

サブ5

 このドキュメンタリー映画は、黒部俊介監督(42)の第1作です。黒部監督は映画の道を志していましたが、あきらめて岡山県に移住しました。地元で知り合いからヒデさんのことを聞き、“興味本位で”会いに行ったそうです。初めて会った日、ヒデさんは監督を演習場へ案内したということですが、監督は「演習場の中へ入れることに驚いた」と当時の気持ちを明かしています。「通行権と耕作権を防衛省から認められていて、地元の農家として生活を営む場所だった。自衛隊と共存している。沖縄では考えられないことだろうと思った」(黒部監督)

黒部監督写真

 今作のカメラが追いかけているヒデさんたち家族は、確かに基地反対運動をしているのですが、何よりもユニークなのがキャラクターの素朴さです。

 いつも自然体で、穏やかで、不器用で、誰にも真似できない唯一無二の自分らしさを持っている人たち。この映画に登場する人物ひとりひとりの生き方が清々しく魅力的です。

 ヒデさんは、30歳以上年が離れた黒部監督に対していつも敬語だったそうです。誠実で、誰に対しても偉ぶらない様子に接してきた監督は「ヒデさんは、平和への思いと日頃の暮らしがそのままつながった生き方をしている。こうした人たちの物語を伝えたい」と話しています。

 映画『日本原 牛と人の大地』は2023年1月7日(土)、元町映画館で公開です。(SJ)

◇映画『日本原 牛と人の大地』
※上映日程は、作品の公式サイト・劇場情報でご確認ください。

ナレーション:内藤陽
監督・撮影:黒部俊介
編集:秦岳志

配給:東風
(C)2022 Kurobeko Kikakushitsu

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