「もの派」を代表する美術家・李禹煥 西日本初の大規模回顧展 兵庫県立美術館で開催 | ラジトピ ラジオ関西トピックス

「もの派」を代表する美術家・李禹煥 西日本初の大規模回顧展 兵庫県立美術館で開催

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 世界的にも活躍する「もの派」を代表する美術家・李禹煥(リ・ウファン)の大規模な回顧展が、兵庫県立美術館で開かれている。西日本では初の開催。2023年2月12日(日)まで。

兵庫県立美術館
兵庫県立美術館

 李禹煥氏は、1936年、韓国慶尚南道に生まれ、ソウル大学校美術大学入学後の1956年に来日、日本大学文学部で哲学を学んだ。東洋と西洋の思想をどん欲に吸収し、1960年代からは現代美術に深い関心を持ち、1960年代後半から本格的に制作を開始した。

  自然や工業製品などの人工の素材を、手を加えずに組み合わせて提示するという、戦後日本の美術運動「もの派」を代表する一人だ。50年以上にわたり国内外で作品を発表しており、国内では2010年に香川県直島町に安藤忠雄氏設計の李禹煥美術館が開館している。

 日本では17年ぶり、西日本では初めてとなる大規模な個展は、李氏自らが展示構成を考えた。「本展は東京で開催された展覧会の巡回だが、別の展覧会だと考えている。兵庫県立美術館は天井が高く、緊張感のある空間。この空間に合うものを選んだ」と李氏。初期の作品から兵庫県立美術館だけで見ることができる新作まで代表作が一堂に会する。

 展示は彫刻と絵画の2つのセクションに大きく分かれている。主に石や鉄、ガラスを組み合わせた立体作品のシリーズは、素材にほとんど手を加えられていない。観念や意味よりも、ものと場所、ものと空間、ものともの、ものとイメージの関係に着目した。見る角度によって違った表情を見せ、見ていると何かを語りかけてくるようだ。李氏は「人間の考えをひけらかすのではなく、控えめに『もの』に語らせる」と話す。

 兵庫県立美術館の地下から2階へ続く螺旋(らせん)階段に設置された「関係項―無限の糸」は、鏡のように磨き上げられた丸い大きなステンレスの底面に向かって、上から細い糸が1本垂れ下がる。安藤建築の空間ならではの作品と言える。

 絵画のセクションでは、李氏の作品の変化を見ることができる。時間の表現に関心を強め、1970年代初頭から描き始めた「点より」と「線より」のシリーズは、キャンバスという空間を埋め尽くすように、色彩の濃さが次第に淡くなっていく過程を表した。

 80年代に入ると荒々しい筆遣いによる混沌とした様相を呈したシリーズ「風より」と「風と共に」を制作、80年代終わりごろからは、何も描かれていない空間が目立つようになる。2000年代に入るとわずかのストロークによる筆跡と、描かれていない空白の反応を試すようになった。時間の概念から空間の概念に変わったといい、「重ねたり塗りなおしたりすることで隠れてしまった空間が存在感を持つようになった」と李氏は振り返る。

 李氏は「アートは1つのパワーを感じさせなければならない。作品を通して新鮮なパワーを感じてもらえれば。そして芸術のありよう、1つの営みを楽しんでほしい」と話す。


「兵庫県立美術館開館20周年記念 李禹煥」
会期:2022年12月13日(火)~2023年2月12日(日)
場所:兵庫県立美術館 
開館時間:10:00~18:00(入場は閉館の30分前まで)
休館日:月曜日・年末年始[12月31日(土)~1月2日(月)]ただし1月9日(月)開館 1月10日(火)は休館

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