出産育児一時金は、家庭に対しての出産費用の負担軽減として、1994年に創設された。スタート当初は30万円だったが、2006年に35万円、2009年1月に38万円、同年10月に42万円…と少しずつ増額されてきた。今回の増額8万円は、これまでの過去最高額。しかし、これまでにも増額にあわせた産院の便乗値上げは毎度のことのように行われてきており、反響ツイートでは「38万円から42万円に増額されたときも同じく値上げしていた。いつものイタチごっこ」「幼保無償化のときにも、保育料を値上げされた」「旅行支援が始まったら、旅館が値上げしているのと一緒」と嘆息されている。
カナダ・フランス・ドイツ・イギリス・イタリアなどでは出産費用が無料であり、日本も同様にすべきだという意見も寄せられた。しかしイタリアについては日本よりも出生率が低く、2020年度では日本1.33人に対し、イタリアは1.24人。若者の有期雇用率の高さ、長引く不況や不安定な労働環境、晩婚化などといった社会環境が要因となっており、日本にも共通点が多い。なお、分娩費用が世界一高額といわれるアメリカの出生率は1.64人だが、分娩費用は約100万円~数百万円というから驚きだ。民間の医療保険が適用されるが、産院・保険会社・出産状況によっての差額が大きく、トラブルも多いといわれている。
今回の産院の値上げについては、「近年の物価高やコロナ禍の影響で、産院の経営も大変だから、値上げは仕方ない…」という声もあったが、本来は家庭支援を目的とした政策である以上、制度の見直しが求められる。2023年1月より「出産・子育て応援給付金」として10万円クーポンがスタートしたが、一時的な支援ではなく、子どもが自立するまでの育児費用・教育費などといった長期的な経済支援が実現されない限り、少子化対策とは呼べないのではないだろうか。
(取材・文=ししまる555)