島根県出雲市に鎮座する出雲大社神楽殿には、日本一の大注連縄(おおしめなわ)が掛けられている。作っているのは、島根県飯南町にある飯南町注連縄企業組合。
大注連縄は、長さ13.5メートル、重さ5.2トン。このうち、わらの重さは約3.5トン。さらに、注連縄を吊る直径50センチの吊り木は約1.5トンもある。現在の吊り木には、わらの重さに耐えられるように、20メートル以上の長さにまっすぐ育った樹齢150年のひのきが使われている。
注連縄は、伝統工法による手作りのため、制作に約4か月かかる。それを重機によって40~50人で編んでいき、1本で1.7トンほどもある菰(こも)を巻いた2本の巨大な縄を約5時間かけて一発勝負でより合わせる。その際は2本の大繩の根元を固定し、1本を2台のクレーンで釣り上げ、もう1本を人力で転がして仕上げていく。
そもそも、なぜ出雲大社に大注連縄なのか。1981(昭和56)年、出雲大社神楽殿が規模を拡張して建てかえられた。その大広間はなんと270畳。そこで、この巨大な神楽殿に合わせた注連縄を作ることになったのである。
使用するわらの産地である飯南町は、昔から米作地帯でわらが豊富。そんな飯南町で、1955(昭和30)年ごろから注連縄を作っているのが飯南町注連縄企業組合だ。出雲大社の分社があるご縁から、神楽殿の大注連縄を作ることになったという。数年に一回不定期で作りかえており、現在の大注連縄は2018(平成30)年に作った7本目だ。
ちなみに、出雲大社神楽殿の大注連縄とほぼ同じ大きさのものが茨城県笠間市の常陸国出雲大社にもあり、これも飯南町注連縄企業組合が作っている。いわば兄弟大注連縄である。
飯南町には、「飯南町大しめなわ創作館」があり、展示スペースでは、大注連縄の制作過程を見ることができる。また、制作工房では、全国各地の神社から依頼されている3~4メートルの注連縄作りの現場を生で見学できるほか、簡単なものから本格的なものまで、手作り注連縄体験も楽しめる。
今年は卯年。因幡(いなば)の白うさぎゆかりの出雲大社で、大注連縄のような太い縁を結びに行くのも良いかもしれない。