劇作家・演出家の平田オリザさんがパーソナリティを務めるラジオ番組(ラジオ関西『平田オリザの舞台は但馬』)に、思想家の内田樹さんが出演。公私ともに親交の深い2人が執筆活動や教育、これからの日本などをテーマに縦横無尽に語り合った。
フランス文学者であり武道家(合気道)でもある内田さん。平田さんの妻も古くから合気道に親しみ、共通の師を持つ「同門」であることから、平田さんのことを「義弟」と呼ぶなど番組は和やかにスタート。
「妻と付き合い始めてから、彼女が合気道を本格的にやっていることを知りまして」と切り出した平田さん。「『僕が何か悪いことをしたら投げ飛ばされるんですか?』と聞いたら、『合気道はそんなことしません』と返されました(笑)」と、妻とのエピソードを披露した。
平田さんのエピソードを聞いた内田さんは、「合気道は先手を取る。悪いことをする前に『させない』。そういうところに『追い込まない』(笑)」と合気道の特長を解説。さらに、最近ではフランスの演劇人やダンサーらが好んで合気道を学んでいることにも触れた。
昨年、平田さんが学長を務める芸術文化観光専門職大学で3日間の集中講義(『言語表現論』)を行った内田さん。自らの言語活動を制限せず、いま自分のなかから生まれてきた「言葉」を発見するという『自分のVoiceを発見する』ことが統一テーマだ。
なかでも学生の関心が高かったのは、「自分の個性と、役割を演じているキャラ設定を混同していないか」という問いかけだったそうだ。個性を重んじている子は自身の「キャラ」を作りがちだが、周囲から賞賛され固定化された「キャラ」は自身の成長変化を妨げかねない。
とにかく若いひとには自由になってほしい、と内田さんは願う。
「どこかで資本主義を終わらないと人類は生きていけない。資本主義を終わらせるときに、どういう形の経済システムにソフトランディングしていくのかが大問題なんだけれど、それを考えている人はあまりいない。過去の成功事例があてにならない現代においては、直感で行くしかないわけです。『こっちに行ったら危ない』、そんな原始的な直観力を磨いてほしい」(内田さん)
内田さんの思いを聞き、平田さんは「うちの学生は勉強もそこそこできる。そして、ほとんどの学生が、ダンスなどの授業で体を動かしていることが強みだと思っています。『最初のアルバイトは肉体労働がいいよ』と言っているんですが、内田さんのいう『直観力』は、ある程度体を動かさないとわからないことです。動きながら、自分のなかで起こる変化を感じてほしい」と、学生への期待を語った。
※ラジオ関西『平田オリザの舞台は但馬』2023年1月5日、12日放送回より