明治から昭和にかけて描かれた近代大阪の日本画166点を集めた特別展「大阪の日本画」が大阪中之島美術館(大阪市北区)で開かれている。4月2日(日)まで。(※イベントは終了しました)
江戸時代からの流れをくむ近代大阪の美術には、おしゃれでスマートな作品から滑稽、ユーモアに富んだものまであり、伝統にとらわれない自由闊達な表現が息づく。とくに大正~昭和前期には、北野恒富(1880~1947年)、菅楯彦(1878~1963年)、島成園(1892~1970年)ら多様な個性の画家がきら星のごとく出現、画壇としての活動も隆盛を極めた。同展ではそのうち約60人によるえりすぐりの作品を紹介、大阪の日本画ならではの特徴や視点、作品の背景なども見て取れる。
展示は6つのテーマで構成。会場に足を踏み入れると、北野恒富が手掛けた多彩な表情の女性が出迎えてくれる。「風」(1917年)では、着物のあわせを両手でおさえながら歩く妖艶な風情の女性を、「宝恵籠」(1931年ごろ)では、紅白梅のかんざしを差した初々しい様子の少女を生き生きと描写。同一人物の作品とは思えないほど、作品によって画風が変化している点も見どころだ。
古き良き大阪の庶民生活をたどることができるのは、菅楯彦の作品。「阪都四つ橋」(1946年)では、並んで座り甘酒を味わう親子、天秤棒で反物を運ぶ男性、魚屋や本屋の店先などが温かみのある筆致で描かれている。菅の弟子、生田花朝(1889~1978年)は、横3メートルを超えるパノラマ作品「泉州脇の浜」(1936年)で、浜辺に集まった大勢の人々を当時の風俗を交えながら細やかに描画、賑わいが聞こえてくるかのような説得力を生み出した。
江戸時代から女性画家が活躍していた大阪では、富裕層を中心に、教養として子女に絵画を習わせる風潮があったという。その土壌から、島成園ら才能溢れる女性画家が登場。島の代表作の1つ「祭りのよそおい」(1913年)は、一見、4人の少女をひたすら麗しく描いた作品のようだが、よく見ると、それぞれの着物や履き物、髪飾りなどで彼女たちの経済的格差、複雑な胸中が浮かび上がる傑作だ。
新しい時代を予感させる1枚も。ショーウインドーのマネキンを見つめる垢抜けた女性が印象的な、吉岡美枝(1911~1999年)の「店頭の初夏」(1939年)は、日中戦争のさなかに発表された作品。だが女性の佇まいやまなざしに暗さはなく、むしろ戦争の先にある未来への期待を感じさせるような爽快感に満ちている。
菅谷富夫館長は、「大阪から生まれた日本画を見てもらうことで、日本画というものがどのように発展し、受け入れられ、楽しまれてきたのかを知ってほしい。それによって、(来場者)1人1人の美術の楽しみ方もより広がると確信している」と話した。
同展は開館1周年を記念した展覧会で、2月28日(火)まで関連イベントを開催する。詳細は、美術館公式HPで。
◆「大阪の日本画」
会場 大阪中之島美術館(〒530-0005 大阪市北区中之島4-3-1)
会期 2023年1月21日(土)~4月2日(日)
※前期は2月26日(日)まで。後期は2月28日(火)~4月2日(日)。会期中、展示替えあり。
開場時間 10:00~17:00(入場は16:30まで)
休館日 3月20日以外の月曜日
観覧料 一般1700円、高大生1000円。
問い合わせ 06-4301-7285(大阪市総合コールセンター)
◆巡回情報【東京会場】
東京ステーションギャラリー 4月15日(土)~6月11日(日)
※開催概要、出品作品は大阪展と異なる可能性がある。