日本の多くのタクシーが「ガソリン」や「軽油」でもない「LPG(液化石油ガス)」を燃料として走る“LPG車”であることをご存知でしょうか。LPG車がタクシーに採用される理由としては「燃料代が安い」というのが大きく、他に「環境に優しい」「安定的な供給が可能」など多くのメリットがあります。タクシーのほか、トラックや教習車にLPG車を採用している企業もあるようです。
良いところだらけのように思えるLPG車ですが、我々が日常的に乗る一般車として普及しないのはなぜなのでしょうか? LPGを供給する会社の業界団体である『一般社団法人全国LPガス協会』に聞きました。
環境面への配慮から、ガソリン車は今後数十年をかけ世界的に廃止となる流れになっています。日本においても政府は2035年以降のガソリン車販売を禁止することを決定しています。その代替としては「電気自動車」が筆頭となり、他に「水素自動車」などが候補として続きます。その一方で、環境面などにおいてもメリットの多いLPG車はなぜか候補に上がっていないのです。
その見解を一般社団法人全国LPガス協会(以後、全国LPガス協会)に聞いてみると、
「電気自動車や水素自動車は日本の“政策”として普及へむけて注目を集めていますが、LPG車は真逆。これには多くの要因が考えられ、いちばん大きいのは『推進されない』ことです。ガソリン車の代替としては申し分ないのですが……」(全国LPガス協会)
日本で最初にLPG車が登場したのは1940年代、戦争によって不足していたガソリンに変わる燃料としてプロパン、メタンに注目が集まったことがきっかけだったようです。
1962年代には割安な燃料費に目を付けたタクシー事業者が本格的に導入を開始し、LPG車はすぐにタクシー業界に広まりました。LPG車は順調に増加を続け、1990年ごろには30万台を突破。ですが、その後はしだいに減少していき2020年には約20万台まで落ち込みました。現在、LPG車のタクシーは減少傾向にあるようです。
普及しない理由として「LPGを充填できる“LPGスタンド”が少ないため一般ユーザーにとっては不便」「販売するメーカーが限られ、車種も少ない」などがあげられます。
「LPGスタンドが少ないのも車種が減っているのも、“卵が先かヒヨコが先か”という話になりがちですが、『歴史がある古い技術の車』として推進されないのが根底にあります」(全国LPガス協会)