兵庫県警は7日、1366億966万円の2023年度当初予算案(前年度比0.1%マイナス)を発表した。直近10年間(2014~2023年度)では5番目の規模。最大は2021年度の1397億8775万円。
主な項目に▼被害が深刻な「特殊詐欺」に関する情報提供制度の創設▼AI(人工知能)技術を活用した画像解析・サイバー空間のパトロール強化などを新規事業として、また▼信号灯器のLED化推進を拡大事業に挙げた。
■「特殊詐欺」情報提供制度創設(300万円)
兵庫県内で被害が確認された特殊詐欺(オレオレ詐欺、預貯金詐欺など)の捜査上、摘発につながった内容について、情報料として上限30万円を支払う。
なお犯行グループの指示役(中枢人物)や犯行拠点(アジト)などに関連し、グループの壊滅に直結する有力な情報には最高で100万円を支払う。
特殊詐欺事件の捜査で情報料を払う取り組みは、全国の警察で初めて。
2017~21年の5年間で、兵庫県警が検挙した特殊詐欺犯行グループの中枢人物は7人(年間平均1.4人)にとどまる。こうしたことから、2025年度までの3か年で、実績や犯罪情勢などを検証し、目標(年間で200件の情報、中枢人物の検挙3人)を達成できない場合は見直しを検討する。
■通信機能付きGPS端末による被害者保護対策(145万円)
生命に重大な危害が及ぶ危険性が高いストーカー、DV(ドメスティック・バイオレンス)など男女間のトラブルを想定、被害者の安全を確保するため、通信機能付きGPS端末を貸し出す(計55台)。緊急通報、位置情報発信、非常ブザーの各機能が搭載されている。
これまでの兵庫県警への相談件数や危険性の度合いを勘案し、1か月平均の必要台数を18台と算出。3か月間継続して貸し出した場合でも運用できるようにした。
■AI(人工知能)技術を活用した捜査機能の強化(下記1+2=計574.6万円)
(1)画像解析システム(284.2万円)
カメラに映った犯人と、その他の場所の防犯カメラ画像を照合し、類似性が高い人物順に自動的に抽出する。
マスク着用の場合でも精度の高い照合が可能となる。
特殊詐欺犯罪では、被害者の自宅へ出向き現金やカードを受け取る、犯行グループの末端「受け子」についても、インターホン画像と付近の防犯カメラ画像の照合により精度が向上する。
(2)SNSでの有害情報をAIが自動的に抽出(290.4万円)【全国初】
SNSの主流をなすツイッター、フェイスブック、インスタグラムに加え、動画投稿サイト・TikTok(ティックトック/短尺)、YouTube(ユーチューブ/長尺)についても、子どもへの性被害や薬物売買に関する有害な情報をAIがチェック、自動抽出する。これまでは専門の捜査員による手作業だったことから、業務の効率化を図るのが狙い。
特に「闇バイト」「高収入」「副業」など、特殊詐欺犯行グループの投稿の疑いがあると判断された場合、警告文を送る。
県内事業者が持つ最新技術を活用して、日常の課題の解決をめざす兵庫県の「HYOGOTECHイノベーションプロジェクト」として選定された。
■信号灯器のLED化促進(14億6500万円)
温室効果ガス削減に向けて、2023~2029年度の7か年で、LED化率100%を見込む(総事業費100.8億円)。交換対象は4万4800灯あり、このうち2023年度は6549灯(約14.6%)を交換する。
兵庫県内では1997年度(1998年2月)に最初のLED化を実施、順次切り替えてきたが、2022年度(2023年3月)までの進捗率は約47%と、全国的に見てもその低さが指摘されていた。
警察庁によると、LED式信号は電球式に比べて省エネルギー効果が高く電気料金が低減されるという。消費電力が6分の1程度に圧縮でき、地球温暖化の原因となっているCO2削減にも効果がある。
また、電球式の寿命が約半年~1年に対し、LED式は約6~8年と効率が良い。
■高度警察情報システム、初動捜査への活用(531万5000円)
スマートフォン型のデータ端末で撮影した画像に改ざん防止機能を付与するシステムを整備。
■例外なき「燃料費高騰」の影響 増加率166%見込む
燃料費高騰の影響は、警察庁舎や交通安全対策の関連施設も例外ではない。兵庫県警は2023年度の光熱費の増加率を166%(※2021年度・11億1400万円を基準とした場合。今後、価格変動の影響もある)と見込む。7億3500万円(このうち信号など交通施設に関連するものは2億9600万円)が上乗せされる。