全国の家庭裁判所で重大な少年事件の記録が廃棄されていた問題で、神戸市で1997年に起きた神戸連続児童殺傷事件で次男の土師淳君(当時11歳)を亡くした父親・守さんが14日、最高裁の有識者委員会による意見聴取に応じた。
守さんは委員会で、「事件の記録は、被害者遺族にとって非常に貴重な資料であり、廃棄した責任は非常に重大だ」と述べた。
そのうえで、廃棄された経緯を詳細に調査したうえで結果を遺族に報告し、公表することや、事件記録のデジタル化などを早急に検討するよう求めた。
守さんは最高裁での面会を終え、「いつか記録を閲覧できるのではと淡い期待を抱いて待ち続けてきたが、廃棄によりわずかな希望さえ奪われた」と話した。そして「廃棄を知った時に心からの憤りを感じた。閲覧できなくても、残っているのと廃棄されたのでは遺族の心情として雲泥の違いがある。国民の常識と司法の常識には乖離がある」と訴えた。
最高裁からは、「廃棄は適切でなかった」と謝罪があり、関係職員などへの聞き取り調査の結果については、2023年4月に報告するとの回答があったという。
最高裁の内部規定では、少年事件の記録を、少年が26歳になるまで保存するとしているが、史料的価値の高い記録や社会的影響が大きかった事件の記録などは、26歳以降も「特別保存」として事実上、永久保存するよう規定している。しかし2022年10月以降、神戸市の事件をはじめ全国各地で重大少年事件の記録廃棄が判明しており、最高裁が設置した有識者委員会で今後の記録保存の在り方の検証を進めている。
神戸家裁は連続児童殺傷事件の全記録を2011年2月28日に廃棄したとしている。最高裁は2022年11月、神戸家裁の当時の職員から廃棄に至った経緯などを聴取した。
最高裁は全国56家裁・支部の少年事件52件について、廃棄された経緯や原因などを個別調査し、結果を公表する。