アフリカ・サファリをめぐる官民の軋轢 社会課題を乗り越えたキーワードは『観光』 | ラジトピ ラジオ関西トピックス

アフリカ・サファリをめぐる官民の軋轢 社会課題を乗り越えたキーワードは『観光』

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 劇作家・演出家の平田オリザさんがパーソナリティを務めるラジオ番組(ラジオ関西『平田オリザの舞台は但馬』)に、芸術文化観光専門職大学(以下、CAT)教授の西﨑伸子さんが2週にわたって電話出演。青年海外協力隊の参加をきっかけに、アフリカのサファリにおける野生動物保護をめぐる現状を人類学的アプローチで研究した視点から、但馬の魅力を語った。

芸術文化観光専門職大学教授の西﨑伸子さん

 幼いころから動物に興味があった西崎さん。学生時代はバックパッカースタイルで各国を旅していたという。1995年からの2年間は青年海外協力隊(職種:生態学※現:環境教育)としてエチオピアに滞在。政府が打ち出す野生動物保護政策が招いた住民との軋轢(あつれき)を解消することが任務だった。

 当時のエチオピアにとって、野生動物は経済発展のカギともいえる重要な観光資源だった。一方で、自然とともに暮らしてきた地域住民にとっての動物は「食料」でもあるため、当然狩りを行う。70~90年代のアフリカでは密猟が横行したために、野生動物の個体数が激減していた。エチオピア政府は「国立公園」という形で保護区を設置することで野生動物の保護・管理を進めたが、その結果、地域住民は保護区から排除されることになり激しい対立が起こった。

 そこで、西﨑さんらが依頼された任務が「住民参加型保全」に向けての調整役だった。「学生だった我々にとっては、言語を習得して『第三者』として関わることで精いっぱい。きっかけづくりだけで2年が終わりました」と当時を振り返った。

 帰国後は大学院でアフリカの地域研究、さらには観光的視点についても知識を深め、その後、研究者として再びエチオピアを訪問。長期間にわたって現地の人々と寝食をともにし、価値観を共有した。住民の自主的な参加を促すキーワードは「観光」だと西﨑さんは考える。

「農園やダムなどの大規模開発には住民参加の余地がありません。警備員として雇われる程度の参加がほとんどで、時には住む場所を奪われることもある」と現地の様子を語る西﨑さんは、さらにこのように続けた。

「観光の場合は人や情報の交流が生まれ、さわやかな風が吹く。現在、アフリカのツーリズムは成長産業であり、ヨーロッパ主体だった以前に比べて東南アジアからも観光に訪れるようになっています。内容も動物を見てまわる従来型のサファリから、オプショナルツアーとして村を訪れて住民と交流するなど、観光も多様化しています。海外資本のみが利益を得るのではなく、還元の仕組みを整えれば、観光はお互いに『楽しめる』余地があるんです」(西﨑さん)

アフリカでの文化観光の様子

 2021年より、兵庫県豊岡市に開校した芸術文化観光専門職大学に着任した西﨑。ニューツーリズム論、社会調査学、国際環境論などを担当している。但馬には前任校の研究で訪れており、コウノトリの野生復帰を目指す取り組みに非常に感銘を受けたそうだ。

授業の様子
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